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2009-09-07 07:39

地獄を見てきた自民党の当選者たち

杉浦正章  政治評論家
 永田町を幽霊のような顔をして自民党の当選者たちが歩いている。古賀誠も町村信孝も森喜朗も地獄を見てきたような陰鬱で暗い表情を隠さずに歩いている。打ちひしがれて、地面にたたきつけられて、選挙後初の党内論議が、首班指名選挙で麻生と書くかどうかなどという、しんからばかげた問題で上を下への大騒ぎだ。民放テレビの司会者やコメンテータに嘲られるのも無理はない。しかしこれで良いのだ。自民党は国中から嘲笑の対象となって、役人も説明に来なくなって、財界からも見放され、本当の地獄を味わう必要があるからだ。一番つらい“無視地獄”だ。果たしてこの党が政権を奪還できるだろうか、と思えるところまで落ちるのだ。その灰の中から立ち上がるしか、方途はない。筆者は、それでも起死回生が可能だと見る。政権獲得へのシナリオを書いてみよう。まず直近4年間の衆院選挙と参院選挙をみると、前回の2005年の衆院選挙は小泉郵政選挙で自民圧勝、今回は民主圧勝。2007年の参院選挙は自民失政批判で民主圧勝。すべての選挙テーマが「郵政改革」「政権交代」「消えた年金」のワンフレーズ・ポリティクスで決まっている。マニフェストは事実上あってなきがごときものであった。

 今回も「買収選挙のようなマニフェスト」(元自民党幹事長・野中広務)を無視して、有権者は民主党を選んでいる。つまりワンフレーズ・ポリティクスの“風”を吹かせられるかどうかにかかっているのだ。それでは、政権奪還への戦略的な日程をみると、当面は次の参院選挙で公明党と併せて過半数を獲得して、「ねじれ」現象を起こすことが出来るかどうかが基本だ。自民党政権が急速に衰退したのは、2007年に参院が「ねじれ」て、国会がことごとく野党ペースにはまり、安倍晋三、福田康夫の二代連続で政権投げ出しに追い込まれたことにある。その逆を狙うわけだ。民主党は「小沢党」と化したが、小沢は攻めに強いが、守りにはもろい。鳩山も線が細い。参院を牙城に出来るかどうかがまずカギだ。もちろん1年以内に大スキャンダルか大失政があれば、来年夏の衆参ダブル選挙も不可能ではないが、これはよほどの僥倖(ぎょうこう)に恵まれなければ無理だ。小沢は出来るだけ選挙を引き延ばそうとするだろうが、チャンスとみれば解散に打って出ることもあり得る。過去の平均では2年8か月で解散となっており、日程だけをみれば、あっという間に国政選挙が次々に来ると思わねばならない。

 「若い候補者に落選が多かったから、自民党は再建困難」という稚拙な議論があるが、これは大局をみていない。小泉チルドレンの当選者が83人中たった3人であったのは、もともと“バブル”であったのが消えただけだ。小沢チルドレンら新人143人も“大バブル”だけに、はかない運命をたどるだろう。要するに「イケメンで、歌がうまくて、美女で、一見知性的の、一期限り」を大量に当選させるには、やはり“風”をおこすしかないのだ。そういう選挙になってしまったのだ。それにはまず党の「顔」である新総裁に「改革イメージ」が前面に出て、野党として民主党政権を追い込む「攻撃力」のある総裁を選ぶ必要がある。政党の改革などと言うものは、有権者が納得できればよいのであって、それには理屈より人物像が重要な役割を果たす。そこからみると農水相・石破茂か、やや線が細いが幹事長代理・石原伸晃あたりが適任だろう。誰が総裁になるかはともかくとして、新総裁の下に一糸乱れぬ団結を維持して、民主党政権の欺瞞(ぎまん)を暴くことが重要だ。国会での闘争は今後不可避とみられる民主党マニフェストの修正、転換がある度に、「有権者はだまされたのだ」という欺瞞(ぎまん)性を分かりやすく暴くことだ。それには否決を覚悟でこまめに法案を提出することも大事だ。給油中止には「給油継続法案」、また財源の行き詰まりには「消費税率改正法案」といった具合だ。

 加えて、民主党政権に潜在するとみられる大失政、大スキャンダルを追及することだ。当面は鳩山自身の政治献金虚偽記載と小沢一郎の「西松疑惑」を執拗(しつよう)に突く。加えて汚職を発掘する「特務機関」を裏で編成する必要がある。細川政権が倒れた背後には、自民党の亀井静香が中心となって水面下で動き、細川護煕の佐川急便からの1億円借入れの事実をつかみ、これを野中広務が国会で追及して身動きできなくしたことが原因だ。当時の「亀井機関」のようなものを水面下で動かす必要があろう。それには古賀誠あたりが適任だろう。要するに、改革を進めると同時に、すぐに来る国政選挙で“風”を吹かせることに専念することだ。民主党は現在がフルムーンで、国民の失望感とともにやがて欠けてゆく宿命にある。「2度吹く風は、3度吹く」のだ。小沢が次の参院選挙で圧勝を繰り返し、自民党にとどめを刺すままにしておくか。踏みとどまって「赤壁の戦い」で風を吹かせて逆転するか。来年の参院選挙にすべてがかかっていると言って、過言ではない。 
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