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2009-08-28 20:14

最重要なのは、経済成長の戦略的具体策

湯下 博之  杏林大学客員教授
 8月30日の衆議院総選挙は、日本の将来に大きな影響を与えるものとして注目を集め、各党はマニフェスト(政権公約)を発表して将来像を描いているが、現在の経済困難を乗り越えた上で、生活の安定や繁栄を導くために必要な経済成長を実現するための具体策は、見当たらない。7月24日に発表された今年度の経済財政白書についても、景気回復のためには外需と内需の双発エンジンが必要との指摘はあったが、それを実現するための具体策は、明確には示されなかった。景気回復にとって輸出が重要であることに間違いはないが、単に海外で需要増の風が吹き始めるのを待つだけでよい筈はない。また、現在実施されている緊急対策としての、財政支出や金融対策は必要だが、無限に続けれられるものではなく、危機をしのいだ後の成長実現のための努力が不可欠である。即ち、日本の将来を方向づける経済成長のビジョンと戦略が必要となっている。

 しかも、それを考える上で考慮しなければならない幾つかの重要な要素がある。例えば、米国経済が従来のような消費過剰体質には戻らないであろうといわれており、国際的な経済環境が変化しつつあると考えられることである。地球温暖化対策が避けて通れない現実になりつつあり、これを踏まえて考えなければならない、ということも重要である。また、日本の人口減、少子高齢化が、様々対策を講じるにしても、不可避の趨勢にあることである。では、こういった諸点をも考慮して、どうすればよいか?実は既に様々の議論や指摘がなされている。

 先ず、経済面での日本の国際競争力をふやすことである。そのためには、第一に、日本の得意分野を伸ばすことであり、例えば、省エネ家電等の製品や省エネ技術、地球温暖化防止に役立つエコカーといった分野である。そして第二に、低生産性分野を減らしたり改革したりすると共に、高生産性分野をふやすことで、そのための職業訓練、起業支援、科学技術振興等を行うことである。農業についても然りである。東アジアの活力を生かすことも重要である。単なる投資先としてではなく、マーケットとしても重視し、共生の視点で地域としての経済発展を図ることである。

 公共投資についても、従来型のハコモノや道路中心ではなく、学校その他の施設の耐震化、東アジアの輸送ハブを目指しての主要空港や主要港湾の整備、更には社会的セーフィティー・ネットの充実等を優先し、利権ではなく国民全体の利益を重視したものにする。内需拡大の実現のためにも、退職する団塊の世代を含む有資産高齢者が安心して支出できるよう、高齢者も適度の雇用機会が得られる社会的仕組みを作る。以上のようなことを全体として整理して、戦略的具体策を作ることが必要である。また、ビジョンを掲げて、国民が一致して走り出すような方向づけが大切である。世論として、新政権にその実現を求めようではありませんか。
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