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2009-07-22 09:55

(連載)国連事務総長のミャンマー訪問に思う(2)

田島 高志  国際教養大学客員教授
 以上に述べた中で、特に注目されたのは、潘事務総長がミャンマーの開発問題をも取り上げた点である。「経済」の語は、1箇所のみであるが、「開発」、「繁栄」という語を繰り返し使い、人権や民主主義の要求のみでなく、経済政策の改善の重要性を示唆し、国連の協力にも触れたのは、国連の要人の先方への直接の発言としては、初めてであろう。これは、国連事務総長という国際社会のトップの代表の訪問における、先方への発言としてバランスのとれたものであったと高く評価できる。ミャンマー側もこのような事務総長の誠意を見て、タンシュエ議長が2回も会見に応じたとも見られよう。

 国連は、国際社会の平和と発展のために、ミレニアム開発目標(MDGs)を掲げ、2015年を目標に世界の貧困削減に取り組んでいる。ミャンマーは、国連から開発の非常に遅れた「低開発途上国」に認定されている。それにも拘わらず、欧米先進国は、ミャンマーの人権や民主主義問題のみを取り上げ、経済援助を控えるのみでなく、厳しい経済制裁まで課しているのが現状である。経済制裁は、政府への圧力にはなっておらず、一般庶民の生活を経済的には勿論、政治的にも苦しめる結果のみに陥っているのが現実である。

 ミャンマーの民主化を進めるには、欧米流の民主主義の実現を直ちに求めるのではなく、先ず経済の安定を支援し、他の東南アジア諸国の民主化への歴史が示すように、徐々に中産階級を増やし、段階的に民主化を実現する道を探るべきではないか。そのために先ず現段階で強化すべき経済援助は、人材養成、幼児少年教育、保健衛生、感染症対策、少数民族地域開発など多方面にわたる。

 米国もオバマ新政権の下で、これまでの経済制裁が奏功していないことを認識し、政策の再検討を行っている。私は、日本政府が、日本の知見に基づきより現実的な発想で新政策を起案し、米国を説得して真に安定した東アジア情勢を形成すべく積極的な役割を果すべきだと考える。(おわり)
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