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2009-05-23 09:51

(連載)「世襲制は改革阻害の最大要因」に同感(4)

水野 勝康  特定社会保険労務士
 「国会議員であった者の子孫は永久に国会議員に立候補することはできない」という立法をすれば、これは憲法違反の指摘を免れないであろう。しかし、「国会議員であった者の三親等内の親族は、議員であった者の退職後20年間は同一政党の同一選挙区における公認候補者となることができない」であればどうだろうか。過去の選挙制度に関する判例を読んでみると、どうやら最高裁判所は「どこかで立候補できる可能性」があれば、「立候補の自由はある」ということになり、政党公認候補と無所属候補の取扱いの差は、差別ではなく、合理的な区別であると考えているようである。

 例えば、参議院議員選挙では、無所属のものは全国区(比例代表制)に立候補することはできないが、地方区には出られるから、それで立候補の自由は保障されているということになっている。そうなると、「国会議員であった者の三親等内の親族は、議員であった者の退職後20年間は同一政党の同一選挙区における公認候補者となることができない」という法律を作っても、他の選挙区から立候補することもできるし、無所属で親と同じ選挙区から立候補する自由までは否定されない。20年待てば同一選挙区の同一政党からも立候補できる。このような規制ならば、合憲になるのではないか。

 もちろん、法律で政党に対して党内民主主義、この場合においては候補者選定の手続について、一定の強制をかけることには反対意見もある。任意の私的団体であることを本質とする政党の内部秩序の構成は、本来個人の政党結成の自由、政党活動の自由(日本国憲法21条1項)に含まれる問題であり、法律による強制には馴染まない、という指摘がそれである。この指摘は候補者選定のみならず、そもそも政党の党内民主主義を法で規律できるかという問題にもなる。ただ、私は政党の公的性格、特に政党助成金を受ける存在であることに鑑みて、政党の公的機能の点から、一定の党内民主主義を法で規定しても問題はないのではないかと考えている。

 よって、私はあくまで政党の自主的判断で、党内の民主制が確立されるべきだと思うものであるが、一定の近親者が同一選挙区から立候補することを抑制する立法による解決も、場合によってはあり得ると考える。したがって、一定の範囲内で親族の立候補を規制する「世襲制限」について賛成するものである。(おわり)
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