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2009-04-27 07:54

鳩山は小沢と「刺し違える」ときだ

杉浦正章  政治評論家
 案の定名古屋市長選圧勝にもかかわらず、マスコミは民主党代表・小沢一郎の選挙応援の結果の勝利と書いたところはない。むしろ、「小沢氏求心力、民主党内戻らず」(朝日新聞)というのが各紙共通の基調だ。小沢が打った乾坤一擲(けんこんいってき)の勝負・地方遊説再開は、事実上マスコミを引きつけることなく、不発に終わった形だ。小沢が進退を迫られている、と言う構図はむしろ切迫している。これまでは小沢を支えてきた幹事長・鳩山由紀夫は、もう躊躇しているときではないのではないか。小沢の戦略は、最初から失敗している。知名度が高く、もともと圧勝が予想された候補の応援を、自らの進退に“活用”しようとしたからだ。この結果、新聞にはウラを読まれてしまった。おまけに小沢は選挙事務所で激励しただけで、街頭に立っていない。見え透いているのである。

 この結果各紙の反応は、「代表辞任論が治まる気配はない」(朝日)、「党内では小沢氏の進退問題は、先送りされただけだとの声が強い」(読売)、「みそぎにならない、との醒めた見方も根強い」(毎日)、「小沢氏の求心力回復につながると見る向きは少なく、小沢氏の自発的辞任を求める声は、なお消えていない」(産経)、と小沢の狙いとは逆の方向へ向かってしまった。逆説的に言えば、民主党候補は、小沢応援のマイナスをはねのけて勝ったのが実情だろう。さすがに選挙前は「推薦候補が勝てば、党の復調につながるので、代表の進退問題にもプラスの影響になる」と述べていた鳩山も、説明責任を果たせない場合には「代表として選挙を戦えないということになる」と、辞任論に言及せざるを得なくなった。発言の矛盾が目立つ。

 党内の情勢は、岡田克也や前原誠一など非小沢系議員だけでなく、側近中の側近であったはずの最高顧問・藤井裕久までが、鳩山に「もう辞任しかない」旨を伝えるほどとなっている。やはり最高顧問・渡部恒三も本音は、「辞任・岡田後継」論だ。小沢はおそらくもう政局を読む目が、見えなくなっているに違いない。評論家の中には「ぎりぎりまで引っ張って選挙直前に辞任することで辞任効果を高めようとしている」などとまことしやかに語る向きがいるが、小沢にそんな余裕はない。勝つか負けるかの勝負に出ているのであって、辞任効果を意識するならとっくに辞めている。早く辞めれば辞めるほど辞任効果は生じるのである。むしろ小沢は何としてでも続投を定着させようとしている。

 しかし、名古屋市長選に対するマスコミの反応は、このままではそれが“野垂れ死に路線”であることを物語っている。日経の調査では、麻生内閣の支持率がついに30%を越え、32%に達している。名古屋の選挙は、民主の復調を意味するものではないのである。小沢辞任がなければないほど、内閣支持率アップに貢献することとなる。もはや、小沢を積極的に支える最後のキーパーソンの鳩山が、さる13日のラジオ番組で「小沢さんに一蓮托生と申し上げている。もしものときは刺し違えてでも、代表を辞めてもらう。当然、私も辞める」と述べているとおり、「刺し違える」動きに出るべき時期に到達しているのだ。鳩山が辞任すれば、さすがの小沢も辞任せざるを得ないだろう。それが民主党全体のためであり、長期的にはかならず政治家・鳩山にはプラス効果をもたらすだろう。
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