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2009-04-23 08:36

(連載)策源地攻撃能力をめぐる議論について(2)

鈴木 馨祐  衆議院議員
 少なくとも中国がここ数年間、言い逃れをするばかりで、核・拉致・ミサイルの問題で北朝鮮に真剣に対処した実績がほぼない、という現実を考えれば、北朝鮮が発射後数分でわが国に大量破壊兵器を打ち込める能力を持ち、わが国に対する敵意を明確にしている以上は、個別的自衛権の観点からも必要最小限の装備として、空対地ミサイルもしくはトマホークのような巡航ミサイルの導入も検討されねばならない。次の主力戦闘機の選考も含め、今年議論される新しい防衛大綱に盛り込むべきかの検討が必要だろう。

 さらに米国との連携強化のためには、アメリカがわが国を真剣に防衛する環境を整えるため、日本向けだけでなく、アメリカに向かうミサイルも含めて、日米が共同して対処できるよう集団的自衛権の行使をめぐる国内法の解釈を整理することも必要だ。かつてヨーロッパで盛んだった核の傘をめぐる議論、すなわち、アメリカが自らの市民を核の脅威にさらしてまで同盟国を守るか、という議論を思い出すべきだろう。たしかに今の北朝鮮には、当時のソ連と異なり第二撃能力はない。しかしわが国は、当時のヨーロッパと異なり、「国内の都合で」集団的自衛権の行使を許されていない。

 実際に米軍兵士が日本の安全のために犠牲となる事態を考えれば、集団的自衛権の問題は日米同盟の致命傷となる。その意味でもこの問題は、わが国における個別的自衛権に密接に関係する。というよりも、その大前提となるような問題である。中国や北朝鮮の軍拡の結果、従前のような集団的自衛権は「保有するが、行使できない」といったような答弁を繰り返せる国際環境ではなくなってしまった以上、我々は今こそこの問題に正面から向き合わねばならないのだ。法律論からみるのでなく、国民、国家の安全を守るという国の第一の使命を達成しつつ、必要以上の武力行使はしない、という実務的かつ現実的な観点からの法的整理が必要である。

 こうした議論を、感情論でなく現実主義的な観点から提起するため、先日自民党の中で中堅・若手の同志と共に「北朝鮮に対する抑止力強化を考える会」を立ち上げたところである。選挙の年ではあるが、今のわが国のおかれている状況を考えれば、そんなに猶予はない。与野党を超えた議論を喚起していきたい。(おわり)
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