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2009-03-23 07:57
小沢続投ならほくそ笑むのは自民党だ
杉浦正章
政治評論家
どうみても民主党代表・小沢一郎、代表代行・菅直人、幹事長・鳩山由紀夫の20日夜の会合が「起訴が虚偽記載なら小沢続投」の流れを作ったに違いない。それを恐らく3人の内1人が21日夜数社にリークして、観測気球をあげ、世論や党内の反応をみた形だ。案の定、他の全国紙も追いかけて同調した。党執行部は、起訴後に小沢が続投を決断、一挙に役員会でも続投を支持して、中央突破を図る。これが図式だろう。しかし3者は、恐らく空前の誤判断に気づいていない。それは、小沢の私闘に“一蓮托生”の形で公党の命運を左右させることだ。これを本当に実行に移せば、「民主党政権」を総選挙の目前で失った最大の原因、と招来指摘されることになりかねないのだ。まさに危険な賭をすることになる。
3者の会合は、公表と異なり、恐らく24日の検察の出方と対応一本に絞って、腹を割って話し込んだに違いない。菅も、鳩山も、ここまできたら小沢とは行動を共にするしかない、と腹を決めて臨んだのだろう。やりとりの詳細は全く漏れていないが、これまでの言動を詳細に分析すれば、浮き彫りとなってくる。小沢は2点に絞って自らの決意を語ったのだろう。一点は、検察権力の横暴とは徹底的に戦う。もう一つは、自分への参考人聴取もないし、政治資金規正法違反の形式犯での起訴だ、との見通しを述べたのだろう。そのうえで、起訴が虚偽記載にとどまった場合の選挙に与える影響や党内の反応を詳細に分析したのだ。その結果政治資金規正法違反での起訴なら、党の支持率も下がっていないし、やがてマスコミも忘れるので影響は薄れる、と判断した可能性が強い。首相・麻生太郎が相変わらずバカな発言を繰り返しており、世論の批判はやがて麻生に向かう、とみたかもしれない。
民主党内も、小沢に対する辞任要求は出ていないし、起訴の後、一挙に役員会を開いて小沢が続投を表明し、この線でとりまとめてしまえば、問題ないと踏んだのだろう。その上で、マスコミ対策を話し合った。その結果21日の夜に恐らく鳩山あたりが数社にリークして、虚偽記載での起訴なら「続投」の方向を定着させてしまおう、ということになったのだろう。その結果、朝日、読売、産経各社の報道となった。記事を分析すれば、明らかに共通の情報源から出ている。朝日が一番はっきりと「小沢代表続投の公算大」と、もう後に引けないほど踏み切った。産経も「小沢氏『代表続投』強まる」。読売はさすがに「『小沢氏は辞めない』民主幹部見通し」と、判断を避けて客観報道に徹した。一日遅れで追う社がいることを考慮しての、巧みなマスコミ対策だ。しかしニュースは操縦できても、論調は操縦できないことを知るべきだ。
民主党幹部の判断の背景には、「秘書の形式犯で辞めさせられてはたまらない」という小沢の思いと、これを戒めるどころか、素直に受け取ってしまう菅と鳩山の心理状況があったに違いない。辞めれば岡田克也に後継を奪われるという計算もあったかも知れない。しかし3者とも重要な要素を忘れている。第一秘書が起訴されて議員辞職に至った自民党・加藤紘一の例を挙げるまでもなく、右腕であり腹心の第一秘書の起訴の重さを理解していないのだ。法的な軽重でなく、政治的・道義的責任に思いが至らないのだ。さらに今度の場合、虚偽記載での起訴でも、検察のリークから見れば、あっせん利得罪の捜査も継続する方向も垣間見えるのだ。つまりまだ「西松疑惑」は継続し、その過程における検察のリークは継続するのだろう。そうすると、新聞・テレビに小沢問題が報道され続けるのだ。論調も小沢の説明責任をより強く求めるだろう。
その中で小沢が代表として選挙運動の先頭に立つのは、極めて困難だろう。現に世論調査は各社一致して過半数が「小沢辞任」を求めており、23日付の読売の世論調査では「首相にふさわしい人」で小沢が6・0%と前回の13・7%から半減した。前回も半減しており、倍々ゲームで落ちている。反小沢の元政調会長・枝野幸男が22日の民放テレビで続投を容認したかのような発言をしているが、民主党内の空気は「小沢続投では選挙ができない」とするものが多い。まだ検察の出方が分かっていないから仮定の論議だが、24日にもし民主党幹部のリークの通りに「続投」を決めれば、党内のマグマがたまり、小沢・反小沢の亀裂は拡大するだろう。民主党は「退けば地獄」でなく、「進めば地獄」を選択することになる。小沢続投ならほくそ笑むのは自民党だ。
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