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2009-03-21 07:25
何のために経済活動はあるのか
若林 秀樹
グローバル・フォーラム常任世話人
「製造業派遣制度」と「サブプライム・ローン」に共通していることは、この制度・商品の導入に主体的に関わった人たちが、これらの仕組みがいずれ経済の下降期には破綻し、「経済の持続的発展」や「人々の幸福」には寄与しないことを知っていたことである。それでもこのような仕組みが生まれ、支持される背景にこそ、グローバル資本主義の根源的な課題があるのではないか。
「製造業派遣制度」は、安い人件費での雇用を可能にし、しかも雇用維持の責任を負わない「制度」であったから、これを導入すれば、今回のような景気後退に直面した経営者は、安易に雇用契約を解除して危機をしのごうとするのは、目に見えていた。現行の「製造業派遣制度」は働く側の立場で制度が設計されたものではなかったし、結局失業者が増えれば、社会不安の増大、消費の冷え込みにつながり、そのツケは経営者にも回ってくるのである。
「サブプライム・ローン」は、本来購買力のない層に対して、資産の値上がりを前提にローンを組ませ、それを証券化して、全世界にばらまいたものであり、それがいずれ破綻することは、目に見えていた。これらの2つの事例は、冷戦終了で資本主義が社会主義に勝利し、市場原理の追求こそが人々を幸せにするシステムであるとの思い込みが浸透した結果であり、「自由競争」、「規制緩和」、「小さな政府」、「自己責任」等の名の下に、「人々の幸福」より、「利益の追求」のみに突っ走ってきた結果ではないだろうか。
江戸時代の思想家、三浦梅園は「経済は義を以て利とする」、経済学者のケインズは「経済学はモラル・サイエンスであって、自然科学ではない。経済学は内省と価値判断を用いるものだ」と言っていた。まさにグローバル時代の現代でも通用する言葉であり、今は「何のために経済活動はあるのか」という原点に立ちかえって、現行の経済システムを見直す時期にきているのかもしれない。
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