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2009-03-11 08:53
イラク戦争から6年、アメリカは何を学んだか
若林 秀樹
グローバル・フォーラム常任世話人
2003年の3月19日、アメリカのイラク攻撃が始まった。あれから6年、オバマ大統領は公約だった「就任後16カ月以内の撤退」よりは3カ月遅いものの、来年8月末までに戦闘部隊を撤退させ、残る兵力も11年末までに引き上げると発表した。早期撤退を公約に掲げていたオバマ大統領が誕生した以上、その発表は当然であったが、ブッシュの後にマケインが大統領になっていれば、撤退時期を示さず、駐留がもっと長引くことは必至だっただけに、これも政権選択により、国家の重要政策が変わる「チェンジ」の象徴である。
イラク戦争の大義は「イラクの大量破壊兵器保有」だったが、その真の開戦理由は幻だった。ブッシュ大統領も大量破壊兵器がなかったことを認めたが、他方で「フセイン政権の排除」、「イラクでの民主国家の樹立」にイラク攻撃の理由をすり替え、開き直ったのには、ビックリした。しかし、当初の戦争の大義が喪失し、これだけの犠牲を払いながらも、米軍の駐留を全体として容認している米国民には一層驚いた(世論調査では「イラク戦争は間違っていた」と見る米国民は約8割いたが)。
またミリバン英外相は、「対テロ戦争の名で様々な勢力を同一視して、排除したことが、イスラム勢力の反発を強め、逆にテロリストを増やす結果となった」と指摘した。つまり開戦の大義の喪失、多くの死傷者の発生、1兆ドルとも言われる戦費の負担、世界的なテロ活動の拡大、アフガニスタン復興の遅れなど、これらの事象を総合的に考えると、米国のイラク攻撃は、単に間違っていたとは簡単には済ませられない、大変な罪を犯したことになる。イラクだけでも、市民の死者は少なくとも10万人(最大では131万人と発表する団体あり)を超え、米国兵も4255名(3月6日現在)が命を落としているのである。
しかし今となっては、イラク戦争の時計の針を戻すことはできず、将来への教訓として生かすとするならば、(1)国連(安保理)は国際紛争などの対応に必ずしも万能ではないが、出来る限り国際的なコンセンサス作りに努力して行動する(単独行動主義の反省)、(2)軍事力を軽視すべきではないが、常に対話の道を閉ざすことなく、多面的な関与政策を追求し、途上国に対しては統治能力の向上、貧困削減・教育の整備・インフラ整備など社会開発を促す支援を行う(ソフト・パワーの重視からスマート・パワーへ)。まさにこればブッシュ政権のアンチテーゼであり、オバマ政権が行おうとしている外交政策ではなかろうか。
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