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2009-02-19 19:52
右翼の軍事費拡大要求に直面するオバマ大統領
入山 映
サイバー大学客員教授・(財)国際開発センター研究顧問
蜜月期間中のオバマ政権だが、その初法案は、高らかに謳った超党派(bipartisan)の政策運営にもかかわらず、上下両院で難航した。だが、「今後の政権運営にとって今ひとつ懸念材料がある」とIPSの“TERRAVIVA”2月6日号は報じている。それはタカ派からの軍事予算増加に向けての圧力だという。経済危機乗り切りのための大型予算に便乗して、さらなる軍事力増強を唱える論客が相次いでいるというのだ。
それも、極め付きの右派ないしはネオコンの牙城ともいうべきCSP(Center for Security Policy)やAEI(American Enterprise Institute)、さらにはフォックス・ニュースあたりからの声だけであるのならばともかく、マックス・ブート、ロバート・ケーガン、ウィリアム・ハートゥングといった右翼の論客達までが、外交評議会(CFR)や『ワシントンポスト』あるいは『ウォールストリート・ジャーナル』などの紙上で一斉に軍事費拡大に向けて論陣を張り始めているというから、その影響力は侮れないものがある。
初の記者会見で「政府は何もしないで手を拱いていろ、という人たちとは話し合いはできないが、中味についての議論ならば話し合いの余地はある」としたたかなところを見せたオバマ大統領だが、そのスタンスが仇となって、こうした主張との妥協点を探らざるを得なくなる可能性も皆無とはいえまい。確かに日本と異なって、官僚組織のトップには政治任命の人々を据えることによって相当程度の「官邸主導型」の政権運営は可能だ。しかし、米国の産軍複合体の強固さは、アイゼンハウアーが嘆いた時からいささの変化も見せていない。『ウォールストリート・ジャーナル』によれば、軍事産業の3大勢力であるロッキード、ボーイング、グラマン3社は、ロビーイング費用を54~90%増加させたという。
イランとの対話、あるいはカルザイ政権とタリバン穏健派との接触開始、といった緊張緩和に向けての好ましい傾向がほの見えてきている時だけに、一層タカ派との話し合いの必要性が強まっている。それはパレスチナ問題におけるイスラエルの事情と軌を一にする。それこそ日本の比ではない内憂外患の難局の中に登場したオバマ大統領だが、さらなるこの難題にどう対処してゆくのか。保護主義への傾斜に警告を発するだけではなく、わが国が米国の政策に協力する姿勢や余地は大きいように思う。自衛隊の派遣だけが米国の意を迎える政策ではあるまい。それにしても、そうしたまっとうな議論をする前に、あっちにふらふら、こっちにふらふらと、ぶれる政治指導者と、対案らしいものを未だに提示できず、事態の政局化にしか興味がないかに見える野党指導者にも困ったものだ。与野党に人がいない訳でもあるまい。是非とも声を挙げて欲しいものだと思う。
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