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2009-01-14 08:07
民主党の審議拒否は論理矛盾の政局路線
杉浦 正章
政治評論家
国会の焦点は、「定額給付金は反対だが、受け取る」という世論の矛盾に、どう民主党が対応するかだ。本音では「給付を必要」とする民意を無視して、どこまでも審議を拒否し、反対を貫けるかだ。参院での審議は、民主党が多数で主導権を握ったように見えるが、審議拒否が長引けば、景気対策のため2次補正の早期提出を主張してきた立場とも矛盾する。実はボールは、民主党に投げられているのだ。民主党は経済・景気対策に喫緊を要するという大局を見て、審議拒否をすべきでない。衆院の採決強行を受けて民主党は、参院での審議入りを今週中は拒否する構えだ。昨年末あれほど2次補正早期提出にこだわりながら、国会空転の審議拒否では、泣くのは“景気対策”ばかりなりであろう。審議拒否の1週間で民主党は、新聞やテレビ各社の世論が追い風となって作用してくることを期待しているに違いない。
しかし、政策の是非を問う調査とは別に、「給付されれば受け取るかどうか」という調査があることも無視できまい。産経新聞の調査では「受け取る」と答えた人は84・8%と大半を占めた。Yahoo!のインターネット調査でも90%が「受け取る」だ。 政府・与党が譲歩しないのは、まさにその一点を見ているのだろう。14日の全国紙の社説も微妙なニュアンスの差が生じている。民主党と同じ立場の朝日の社説は「現金を配るというアイデアがこれほど不評なのは、政策の是非の問題を超えて、この政権そのものへの不信の表明と見るべきだ」と、「麻生降ろし」政局に直結させたい気持ちが明確に分かるトーンだ。「民主党が反発するのは当然だ」とも述べて、審議拒否の是非にはあえて触れていない。
一方で、読売、毎日は審議拒否に批判的だ。毎日は給付で妥協しない政府・与党を強く批判しながらも、「民主党も審議拒否戦術には慎重であるべきだ。2兆円を今、何に使うべきか。野党多数の参院で十分に審議し、与党に修正を迫るのが正攻法だ」と、民主党の国会対策を批判している。読売はもっとはっきりと、「補正予算と2009年度予算の早期成立は、喫緊の課題」と強調するとともに、「審議を通じ、約2兆円に上る定額給付金予算の削除要求に伴う代替案を明示し、政府・与党に修正を迫れ」と民主党を促している。加えて「民主党が審議拒否・遅延戦術をとるならば、参院の補正審議と同時に、衆院で09年度予算審議も進める並行審議も、やむをえないところだ」と、与党が計画している異例の国会審議も是認している。
たしかに評判は最低の給付金だが、民主党の徹底抗戦にも限界があるのが実態だ。なぜなら給付金をつぶした場合の選挙基盤への影響を、全く無視することはできないからだ。共産党にしても党員は恐らく「不要」の数パーセントでなく、「必要」の9割に属しているだろう。民主党や社民党も同様だ。したがって、国会対策面でも給付金を完全につぶすわけにはいくまい。見え見えなのはマスコミの調査にのって抵抗したふりをして、自民党に「60日ルール」を使わせ、出来れば造反を誘い出し、政局に持ち込む作戦だ。要するに、政策そっちのけの政局路線が衣の下にはっきり見えているのだ。
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