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2008-12-04 07:58
麻生支持の巻返しが急な自民党内
杉浦 正章
政治
“寸鉄人を刺す”という言葉があるが、さすがに政界実力者の発言は形容が見事だ。その麻生擁護の“寸鉄発言”で窮地に陥った麻生政権が徐々に失地を回復し始めた。明らかに「反麻生」で動き始めた自民党内中堅・若手の動きにもブレーキがかかっている。民主党代表・小沢一郎の“超大連立”発言で狙った自民党分断は、自民党の締め付けが成功しつつある状況から、またまた不発に終わりそうだ。政治の本筋を見極めるには、麻生批判に徹する朝日新聞などの紙面や、これに踊らされる民放報道番組だけを見ていたら間違う。朝日は連日「政権失速状態」「 麻生政権はまさに土壇場に立った」といまにも政権が倒れるような報道を続けているが、本当にそうだろうか。反麻生の元行政改革担当・渡辺喜美が“寸鉄発言”で追い詰められた過程を見ると、ちょっと状況が違うのではないかと思える。
まず元首相・森喜朗が渡辺の行動について「どうして自分たちで選んでわずか2カ月の総裁を守っていく気持ちを持てないのか。自民党ではない。(これでは)自分党だ。自分のことしか考えていない」と述べるとともに、「マスコミに受けたいなら、お笑いタレントでもやればよい」と切って捨てた。渡辺に自民党を離党してから批判せよとも迫った。政界に「お笑いタレント」の一言が波紋を呼び、渡辺にとって痛打となった。渡辺は国民新党代表の綿貫民輔までから、「口だけなら誰でも言える。やってから言え」とこき下ろされている始末だ。こうした中で、中川秀直らが渡辺らと組んで結成を目指す“きな臭い動き”「社会保障に関する議連」の発足が、先延ばしを余儀なくされる状況となっている。今後中堅・若手の暴発がないとは言えないが、当面は押さえ込みに成功しつつある。
一方、幹事長・細田博之は小沢の打ち出した“超大連立”構想について「またかという感じだ」と一言で形容した。これもうまい。昨年秋に福田康夫に働きかけて小沢が大失敗した自民・民主大連立構想を想起させるとともに、また小沢の病気が始まったと政界でやゆされる結果となっている。派閥の領袖からも麻生擁護の発言が目立つ。伊吹派会長の伊吹文明は2日「総務会長は一番いい踊りは首相に踊ってもらう必要があることを理解すべきだ」と発言、予算編成をめぐって首相を窮地に陥れかねない総務会長・笹川尭の動きをけん制した。
このように、自民党実力者、派閥領袖、執行部の“巻き返し”の動きは、徐々に党内に浸透しつつある。背景には、麻生の後継がおらず、ここで政変を起こしては総選挙を前に醜態をさらすことになる、という判断がある。重要なのは「政治家を見る目」が軽佻浮薄系統のメディアとは異なっていることだ。テレビ番組のように「失言や漢字の誤読をするから首相の器ではない」と短絡しないのだ。政治家は長年人を見る目を養うのが商売。優劣を判断する基準がある。リーダーシップや金融危機への素早い対応などから、首相としての適性が麻生にないとは、まだ見てはいない。自民党国対関係者らとの3日の会合でも「首相らしい発言をすべきだ」と麻生節復活を望む声すら出ている。今後の焦点は、麻生自身が“初期不良”を自ら是正し、ぶれない政権運営を出来るかどうかにかかっている。
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