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2008-09-16 09:12
転換期の中国経済と日中関係
田島高志
東洋英和女学院大学大学院客員教授
先日、日中間の学術交流、知的交流を行っている財団法人霞山会の主催により「転換期を迎える中国経済:日中関係の視点から」と題するシンポジウムが東京で開かれた。日中双方の学者、研究者がパネリストとなり、中国における外資政策と産業政策の連関、産業構造の変動、マクロ経済政策の成長路線から均衡志向調和路線への変化、並びにそれらの関連課題についての議論が、熱を帯びて率直に行われた。
すなわち、中国の経済成長が主として対外貿易に依存し、対外貿易は主として外資企業に依存しているため、最近は、外資導入の業種や地域を奨励、制限、禁止などに分類したり、加工貿易規制を強化したり、省資源、環境保護、ハイテク拡大等を推進するなどにより、外資の選択を通じて産業構造の高度化を図ると同時に、沿海部と中西部の地域格差の改善を図ろうとしていること、また、外資優遇策を調整、縮小し、例えば企業所得税法、労働契約法、独占禁止法などを制定あるいは改定して、内外企業の統一化を図りつつあること、などの諸点が説明され、それに伴う課題が議論された。
しかし、会議を最も盛り上げ、白熱した議論が日中研究者間で闘わされたのは、都市と農村の格差及びそれに対する逼迫した克服の必要性についてであった。中国では、戸籍が都市住民と農民とで完全に分かれており、都市への出稼ぎ農民であっても、戸籍の変更は出来ない。都市と農村では土地所有制も異なり、地方政府による農民からの土地収用が頻発している結果、農民の窮乏化が起こっている。都市には社会保障制度があるが、農村にはない。そのような状況に対し、日本側パネリストから何故早期の改善ができないのか、と解決策の提案を示して、迫ったのに対し、中国側からは、日本側の提案を評価しつつも、現在胡錦濤政府が三農問題に取り組んでおり、解決には時間が必要であるとして、一挙に解決はできないことを強調した。
「中国は、国土が広く、人口も多く、歴史も長い。教育と社会保障の改善、工業と農業の調和、地域間格差の是正、対外開放と国内企業育成の調和、人間と自然の協調(環境保護)など問題が山積していることは十分に理解しており、徐々に改善に向かうであろう。日本についても、ドーハ・ラウンドが進まない原因は、日本の農業に問題があるためで、その解決には時間を要しよう。農業問題は、日本でも、中国でも、歴史的な問題である」などの反論があった。今回のシンポジウムで最も印象的で、かつ意義が認められたのは、日中双方ともに中国の健全な経済発展を期待し、日中間の互恵関係の進展を願う雰囲気を維持しつつ、歯に衣きせぬ率直な議論が終始展開されたことであった。
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