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2008-09-03 07:51
盛り上がりそうにない自民党総裁選
杉浦正章
政治評論家
「麻生太郎本命」は不動だが、自民党内でこれはと言う対立候補が声を上げない。ただ一人意欲を見せる小池百合子も、自分では20人の推薦人も集められない“にぎやかし”的候補にすぎない。中堅・若手に擁立の動きのある石原伸晃も、“オリンピック精神”の部類だろう。「無投票」は避けたいのだろうが、自民党総裁選挙も過剰演出の「田舎芝居」になると、国民はそれを見破る。「麻生首相」の支持率上昇で早期解散という作戦につながげたいなら、本格候補による総裁選挙が不可欠だろう。とにかく自民党内は、奇妙な雰囲気になっている。大勢は、総選挙対策で「麻生首相」に落ち着かせたいという雰囲気だが、演出の大舞台を設定しないと、国民の関心を呼べない。しかし総裁候補とされる候補は、今回は見送りたいという感じが濃厚だ。負ける戦いをあえてする必要がない、という消極姿勢だ。町村派は二代にわたる「政権投げ出し首相」を出して謹慎。元首相・森喜朗も麻生支持を鮮明にしており、町村信孝自身も、福田康夫を補佐できなかった責任をとって、不出馬。自主投票しかない情勢。
一時は「ポスト福田」に意欲を見せていた経済財政担当相・与謝野馨も、なぜか口をつぐんでいる。閣僚の方が居心地が良さそうな雰囲気だ。前々回の総裁選に出馬した谷垣禎一も、古賀派にのまれた形で、なぜか元気がない。古賀自身は、恐らく麻生支持の腹を固めているのだろう。構造改革堅持の上げ潮派で、麻生とは対極にある元幹事長・中川秀直も、自分でやる気はないらしく、もっぱら小池百合子の方を指さしている。前回津島派内をまとめ切れないという醜態をさらした前財務相・額賀福志郎も、出馬を否定。こうして自民党内の総裁候補とされてきた面々は、ことごとく“すくんで”しまった形となっている。そこで、テレビメディアなどの先行もあって、浮上してきているのが小池百合子だ。狙いは、「麻生・小池」による総裁選挙の構図で一挙に話題をさらって、小沢一郎しか立たずに、辛気くさい民主党代表選挙の影を薄くしようというわけだ。小池もなにやら“クリントン風”の服装が目立つようになってきた。
しかし、これでは自民党総裁選挙は、歴史上例がないほど軽いものとなる。小池と言えば日本新党や自由党を“渡り歩き”、6年前に自民党に入り、クールビズで閣僚・党首脳のネクタイを外させて、日本の政治家をだらしなく見せた、くらいの印象しかない。せっかくの防衛長官ポストも、次官と騒動を起こしただけで、政治力に疑問を投げかけて、終わっている。麻生と戦うだけの政策、政治の見識、理論武装があってのことならば問題ないが、いまの感じでは舞台盛り上げの“にぎやかし”的な演出効果を、自民党が狙っているとしか思えない。この戦いを国民がなるほどと納得するだろうか。女性票が自民党に戻るだろうか。小池に勝った「麻生首相」の支持率が上がる結果を招くだろうか。全く疑問だ。上げ潮派も中川が堂々と自分で出馬して政策論争を挑むか、元首相・小泉純一郎を擁立するくらいのドラスチックな動きを見せないと迫力が出ない。
中堅・若手が石原伸晃を擁立しようとしているが、このケースは、大きな動きになれば自民党にとってプラスになる。自民党に若返りの印象をもたらすからだ。山崎派では石原擁立を考慮しているようだが、「ポスト福田」の第一声を上げた幹部の前経済産業相・甘利明が、麻生氏支持を明確にしており、結束して石原を推すことは難しいだろう。要するに、国会議員の党票では、麻生先行で、有利の情勢はまず動かないと見られる。528票中47都道府県連の141票の動向も焦点になるが、麻生は、前回地方票で46・1%を得て、福田(53・9%) に7・8ポイント差にまで迫る善戦をしている。今回は、麻生に大勢が流れるだろう。しかしその演出が今のままの流れでは「田舎芝居」のようで、国政をまじめに考える国民の支持を得られるかどうか疑問がある。演出の狙いが、いささかお粗末すぎると言うことだ。
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