政教一致を説くイスラム正統派と、分離を実現しようとする近代派の相克は、アラブ諸国を中心として、多くのイスラム国家に見られる現象だ。イスラム律法(シャリア)の厳格な適用と議会による法の支配(rule of law)の争いだといってもよい。なんらかの解決策を見いださない限り、第二・第三のタリバンやアルカイダが出現するのは、ほとんど自明だろう。その意味でイスラム世界における世俗主義の先駆者トルコが注目をひいている。かりそめの陰謀説のようなものに溺れて、一方が他方を制圧しても、それが本質的な解決に繋がらないのは自明だろう。だからといって、足して二で割るような解決策が成功するとも思われない。その意味では文明史的な時期に遭遇しているイスラム世界だが、世界人口の三分の一を占めるこのグループの動向は、十字軍やレコンキスタ(キリスト教徒によるスペイン奪回)の時代にも増して、われわれのありようを規定するものになるのは確実だ。