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2008-07-21 14:54
新聞を賑わす官僚の腐敗、堕落、汚職に思う
岩國哲人
衆議院議員
世の中の人気商品、人気俳優が次々と変わっていっても、時代劇の人気は、どうやら日本人にとっては永遠のもののようである。「暴れん坊将軍」「大岡越前」「半七捕物帳」「子連れ狼」「木枯らし紋次郎」「眠狂四郎」「鬼平犯科帳」「水戸黄門」等々、枚挙にいとまがないほどである。私の娘たち二人は日本の学校へ全然通わないままに、ロンドン、パリ、ロンドン、ニューヨークと、小学校から高校時代をすごした。その間は、毎週一回土曜日の英語学校と、日本の絵本、東京から私が持ち帰るテレビ番組のビデオなどで日本語の勉強をしてきた。テレビという便利なもののおかげで、楽しみながら日本語学習の補充ができたのはせめてものことである。とりわけ長女の麻利は時代劇には目がなく、最も好きな番組が「水戸黄門」。あるとき電話がかかってきた。
「パパ、ゆうべの水戸黄門見たの?水戸黄門がね、カネをやくざからもらってる役人のことを『やくざにん』だって言ってたの。日本は昔と同じことをやりだしたのね」という。山形地方の紅花の利権を手に入れようとする商人とやくざが傲然と突っ立っている前で、両手をついてお辞儀をする役人。それを見て黄門がつぶやく。「金の力とは恐ろしいものじゃな。これではまるで(商人と役人の立場が)あべこべじゃ。『やくにん』ではなくて『やくざにん』ではないか……」と。なるほど娘の言う通りである。最近の相次ぐ政界、官界の汚職を見ていると、水戸黄門の時代に返っていったようである。暴力団や悪徳企業のカネが政治家や役人を悪くして、歴史と文化と道徳を誇りにしてきた日本人は、外国の都市で肩身のせまい思いで生活している。
日本に汚職が多く、政治腐敗の規模がますます拡大してゆく原因は、長期にわたる一党支配と、その結果としての政官癒着にある。安定的に汚職がやりやすい、隠蔽しやすい構図が、先進国の中で最も確立されていて、不正な利益のために先行投資する最も安全なマーケットになっているからだろう。だからこそ国会議員の多くは、口では「大変だ!大変だ!」と言いながらも、息子に後を継がせるための地盤づくりに精を出す。この事業だけは相続税が「高齢者マル優」の扱いになることを知っているからである。新聞の政治面と社会面を賑わす官僚の談合、汚職、不正、収賄、逮捕などなど、あきれるばかりだが、そういう記事に接しながらも、役人のなかには高い志を持つ人も多い、と私は信じたい。民主党がかつて「脱官僚」をポスターにすりこんだ時も、私は異を唱えた。民主党は、官僚出身であっても、「志が高く、目線は低い」人を議員に選んで来ているからだ。「脱官僚」は「奪官僚」と書き換えねばならないと。
それでもなお官僚に対するバッシングは絶えない。特に「脱藩」官僚と自称する官僚「脱落」官僚組が官僚組織への批判を売りものにし、話題にしようとするのは、見苦しいばかりだ。居酒屋タクシー使用も、マイレージ私用も、いいことではないが、「公金私用」を問題にしたい官僚脱落組は、1人2千万円の公費留学費用とその期間の給与を、きちんと国に返済して退職したかどうか、をまず明らかにすべきだろう。民間企業ではすでに30年前から、留学という機会を与えられながら、その経歴を流用して、転職した社員に、返済義務を課している。志の高い官僚であれば、当然返済していると思うと、これが全く逆で、この20年間だけでも200人の官僚が留学費用を1人も返済せず、その合計額は40億円にのぼると推定されている。公金持ち逃げと、どこが違うのか。
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