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2008-07-17 20:33
バイオ燃料の使用を再検討すべし
大河原良雄
グローバル・フォーラム代表世話人
7月9日に閉幕したG8洞爺湖サミットの議長総括によると、食料価格高騰の問題に関し「・・・その影響について深刻な懸念を共有し」、「バイオ燃料の持続可能な生産及び使用のための政策が食料安全保障と両立するものであるとの確保を含む・・・多くの行動を取ることに合意した」と謳われている。然しバイオ燃料の普及と最近の食料価格の高騰との間にはっきりした相関関係は存在しないと考えてよいのであろうか。7月11日付産経新聞報道によると世界銀行の内部資料において2002年1月から今年2月までの食料価格の上昇幅140%のうちバイオ燃料の影響は75%を占めると試算されているとの事で、世銀がバイオ燃料は食料価格に「重大な影響を与えている」との見解をとっているのは、この試算に関係があるとみられているという。
これより先、7月9日付の“International Herald Tribune”紙は「欧州ではバイオ燃料の使用目標の削減が考慮されている」と、以下の内容を報じている。最近まで欧州各国政府は2020年までに欧州の輸送用燃料の10%をバイオ燃料に依存するとの目標を掲げていた(米国では玉蜀黍生産の4分の1はバイオ燃料に向けられており、ブラジルでは砂糖、欧州では穀物及びオイルシードがバイオ燃料に供されている)。然し、バイオ燃料使用に伴う森林伐採や食料価格の高騰といった状況に照らして、英国の運輸大臣やドイツの経済大臣のほか、欧州議会の環境委員会が、10%目標の見直し(例えば4%)を求めるといった動きが見られる。これに対しEC委員会のスポークスマンは、「食料価格の上昇は、食肉、乳製品の需要増加(特に中国、インド)、過去2年の世界的収穫不良、投機及び輸出規制によるものである」旨述べて、バイオ燃料が食料高騰をもたらしていることはないとしている。
冒頭の議長総括は、最近の世界経済について、石油価格の暴騰、食料価格の高騰によってインフレ圧力が高まっており、「金融市場の安定及び保護主義との闘いという課題に取り組むことが求められている」と述べている。更にアフリカ開発との関連において「最近の原油及び食料価格の上昇が、後発開発途上国の経済に深刻な影響を及ぼしていることが広く認識された」とも述べられている。
以上の様な状況に照らせば、食料価格の高騰が玉蜀黍、砂糖、大豆等を原料とするバイオ燃料の使用のひろがりに伴う食料需給関係の変化によってもたらされているとの世銀見解を精査し、食用作物を原料とするバイオ燃料の使用を廃止することを考慮すべきではなかろうか。稲わら等非食用農産物を使用するバイオ燃料による代替を積極的に進めるほか、原子力、風力、太陽光その他代替燃料の開発、活用をはかるとの思い切ったイノベーションによる政策転換をはかるべき時期になっているのではないかと考える。
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