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2008-07-01 19:53
米国の対北朝鮮政策に伴うリスク
鈴木馨祐
衆議院議員
アメリカが北朝鮮に対するテロ支援国家指定の解除のプロセスに入った。北朝鮮が核の申告を行なったことを受けての対応である。これに対しては様々な批判が、アメリカにおいても、そして日本においても、存在している。拉致・核・ミサイル、すべての問題の一番の当事国である日本の立場としては、自らの国益を護るためにいろいろと国際社会に対して主張していかなくてはならない。しかし、この稿ではそのことはひとまず置いておいて、今回のアメリカの動きが今後の国際情勢やアメリカの国益に与えうる影響という観点から、若干の分析を試みたい。
確かに拉致は言うに及ばず、核の問題についても非核化を真剣に行なうつもりであれば当然不可欠な核兵器に関する情報や濃縮ウランの情報が、今回の申告には含まれていないし、更には寧辺以外の核施設についても不透明であり、一連の動きは、言ってみれば「北朝鮮にとって差しさわりがない範囲での動き」である。申告の正確性の検証がテロ支援国家指定解除の条件といったところで、その大元の申告自体が「ざる」のような状況で、非核化を進めるような内容ではないわけで、実態的に考えればそんな申告がいくら正確であっても意味はない。逆に言えば、北朝鮮が正確に申告できる範囲のものしか、アメリカは求めなかったわけで、アメリカも非核化にそこまで必死ではない、というのが残念ではあるが客観的な判断だろう。
中東問題など、いろいろな問題を抱え、政権の残りもわずかとなったアメリカの事情を考えたとき、確かにアメリカ自身は、核の脅威も拉致の被害も受けていないわけで、自国の国益を考えれば今回の一連の動きは理解できなくもない。しかし、長期的に見れば、実は今回の動きは、アメリカの国益にも大きなマイナスの影響を与えうるリスクがあることは指摘せねばならないだろう。(1)アメリカは、自国への直接的な脅威や国益の対立などやむをえない事情がない場合でも、同盟国の国益、安全保障を簡単に切って捨てる、という先例を作ってしまったということ、(2)「核兵器を持たなかったサダム・フセインは死刑となり、核兵器を持った金正日はまんまと実質的に失うものなく、アメリカの譲歩を引き出すことができた」「核を持たねば独裁者は自らの身の安全を図れない」という議論を、アメリカの今回の動きは図らずも実証したとういうこと。
この2点は、今後のアメリカの外交政策、ひいては国際情勢全般において、大きな不安定要因ともなりかねないのではないだろうか。非伝統的脅威への懸念とともに、国家についても大量破壊兵器へのアクセスが増していく可能性が高い今後の国際社会の動向を考えたとき、北朝鮮のような国家にすら核保有を結果的に容認することにつながりかねない今回のアメリカの動きは、大きな禍根を残すのではないかとの不安を禁じえない。東アジアにある日本という国家の政治家として、今後とも安定的な国際社会の構築に向けて何ができるのか、厳しく考え、行動していきたい。
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