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2008-07-01 08:43
地雷原をゆく臨時国会
杉浦正章
政治評論家
民主党代表・小沢一郎は、解散に追い込むと公言する秋の臨時国会に、どのような戦略で臨むのだろうか。民主党首脳は「恐らく地雷原を行くようなもの」と漏らしているが、確かに首相・福田康夫を追い込む材料に事欠かない。その多すぎる材料の使い道だが、まず年金だ。後期高齢者医療問題など社会福祉行政の事実上の破たんと物価高騰追及でボディーブローを効かせ、再度登場する新テロ対策特別措置法改正案でとどめを刺す、戦略が有力だ。場合によっては最終決着を1月にまで持ち込む長丁場になる可能性がある。臨時国会は来月22日にも招集される方向だ。まず、通常国会末に審議をストップさせたままの民主党が審議に応ずるかどうかだが、党内は次第に審議に応じて論戦で勝負する方向に変わりつつある。せっかくの好材料を使わない手はないという流れだ。政府・与党が原油高対策や岩手・宮城内陸地震の復旧対策などにあてる2008年度補正予算案を提出する方針であることも、審議拒否をしにくくさせている。恐らく早期に審議に応ずるだろう。
論戦は、継続審議になっている後期高齢者医療制度廃止法案に加えて、手詰まり状態の消えた年金問題、新たに発生した厚生年金の膨大な入力ミス問題など、「事実上破たんした社会福祉行政」がまず焦点となる。さらに重要なのは、石油価格暴騰で「第3次石油危機」の状況に陥った世界経済とそのあおりをまともに食らっている消費者物価高騰問題である。田中内閣を襲った狂乱物価にはまだ至らないにしても、物価高が政権を直撃するケースは歴代政権でも多い。過去十数年自民党が政権を維持できた背景には物価の安定が大きく貢献している。しかし電力、ガス大手の値上げ、消費者物価の15年ぶりの上昇と家計を揺るがす事態に陥っており、これが内閣支持率を更に低下させる方向は目に見えている。高齢者、年金受給者に次いで、主婦層までが内閣不支持に回る流れができそうだ。内閣支持率は、サミットをやり、その後内閣を改造すれば、若干の回復はあるかもしれないが、すぐに下落する要素の方が格段に大きい。
小沢としては、こうした政府・与党追及の好材料で政権を追い込んでゆく構えだが、決め手は何かというと、やはり政府が提出する自衛隊の給油継続のための新テロ対策特別措置法改正案だ。自民党参院議員会長・尾辻秀久は、同改正案に民主党が反対した場合の対応に関し、「3分の2以外ない」と表明、早くも決戦論を展開している。これに対し民主党の参院議員会長・輿石東は「新テロ対策特別措置法の審議で、与党が衆院の3分の2で再可決するなら、再可決を頻繁に使うべきではないと意思表示する」と述べ、再度の首相問責決議案提出を表明している。小沢としては「再度の問責決議」が決定的に有効になるタイミングを狙って提出することになろう。有効なタイミングとはもちろん新聞社の社説などが、解散総選挙による決着を要求して、福田が持ちこたえられなくなる状況だ。このようにあちこちで地雷が爆発するなかを、福田が中央突破するのは容易ではあるまい。政府・与党に不利な材料ばかりが山積する中で、秋の臨時国会は戦後の国会史の上でもまれに見る、政治決戦の場となることは避けられまい。
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