ホーム
新規
投稿
検索
検索
お問合わせ
2008-06-02 09:13
決断の岐路に立つ麻生太郎
杉浦正章
政治評論家
支持率低迷の福田低空飛行内閣が続く中で、「ポスト福田」に向けて麻生太郎の“模索”が続いている。短期決戦ならサミット後の政局夏の陣に向けて腹を固めなければならない時期だが、動きが鈍い。おそらく閣外で反福田に踏み切るか、体制内でなお地盤を固めるかの岐路に立っているからだろう。決定的な理由は、下手に動けば民主党に天下をさらわれかねない危機に、自民党が瀕していることであろう。麻生発言だけは、相変わらず面白い。福田を「能なし」と決めつけた中曽根康弘の発言に続き、麻生は「バカ」発言だ。「困っちゃうんですよね、なんて言われると、バカ、それはお前の仕事だろう、と言いたくなる。あなたは官房長官ではないのですよ」とは、よくいった。日ごろの思いが噴出したものだろう。しかし、その後に行動が続かないから、発言が“遠ぼえ”的で軽くなる。
首相候補の支持率だけから見ると、麻生は、現職首相・福田康夫の7.1%を倍以上離して、16%もある。最近にはめづらしい“人間的な魅力”を持った政治家である。若年層の人気も高く、自民党内が「落ち目の福田より麻生総裁で総選挙に突入したい」という誘惑に駆られてもおかしくない。しかし国民的な人気だけで、自民党総裁になれるわけではない。クリヤーしなければならないハードルは大きい。まず弱小基盤をどうするかだ。麻生派は20人、隠れ麻生派もいるが弱小派閥だ。「ポスト安倍」で発生した麻生包囲網ができれば、ひとたまりもない。頼みの綱は古賀派だが、古賀派は旧宏池会が事実上の「麻生外し」で集まったばかりである。61人の大所帯だが総裁候補が不在と言ってよい。当面の麻生の命運は、党選対委員長・古賀誠が握っていると言ってもおかしくない。麻生と古賀は同派結成以来頻繁に会っており、「近親憎悪」は徐々に和らぎつつある。
次のハードルは、「消えた年金」「後期高齢者医療制度」と相次ぐダイナマイトの破裂で自民党基盤が音を立てて崩れつつあり、これに党内抗争が発生すれば、国民から完全に見放されかねない状況にあることだ。民主党代表・小沢一郎がそこを見逃すわけがない。これまでの自民党の党内抗争のように、党内だけを見ていればよいという状況にはない。こうした中で元首相・森喜朗らが水面下で動いているのが「麻生抱き込み」構想だ。麻生を党か福田内閣の重要ポストに置き、その人気を利用して総選挙を戦おうという狙いだ。恐らく福田は、かねてから予想していたとおり、サミット後には内閣改造を断行して、起死回生の新体制の発足を目指すだろう。福田としては、麻生を幹事長か副総理に任命して抱き込み、挙党態勢を印象づけて、解散・総選挙に臨みたい腹だろう。従って、麻生は反福田に走って独自の戦いを進めるか、それともとりあえず体制内に取り込まれて次を期すか、という極めて重要な決断を迫られているのが現状だ。
>>>この投稿にコメントする
修正する
投稿履歴
一覧へ戻る
総論稿数:4819本
グローバル・フォーラム