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2008-05-12 08:34
誤算に次ぐ誤算、末期的症状の自民党
杉浦正章
政治評論家
自民党に末期的意識の混濁があるように気がしてならない。後期高齢者医療制度問題で首相以下方向性を把握できず、国民の神経を逆なでする発言を繰り返す。発言が全部裏目に出て、自民党支持基盤が結党以来の地殻変動を起こしているのに気づかない。誤算に次ぐ誤算、“落城”というのはこういうものかも知れない。普段は気にもとめない国民新党幹部の発言だが、医学博士・自見庄三郎の発言だけは胸にずしりと響いた。NHKで自民党厚生労働族の大村秀章に対し「大村君、昔の自民党は、一つの世代に冷酷な制度を押しつけるような政党ではなかったよ。老・壮・青のバランスを取る政党だった」。大村も返す言葉に詰まっていた。
何度も指摘しているように、自民党長期政権は、官僚主導が高じて、まるで宦官支配の清朝末期の様相だ。その氷山の一角が、年金問題と後期高齢者医療制度だ。そもそも説明もしないで、いきなり75歳以上の年金から天引きするような政策を打ち出す政府が、世界中どこににあるだろうか。民間企業にしてもこれだけの方針転換は社員、労組への根回しで数年かかる。もちろん社長以下の進退をかけた問題となる。この期に及んで自民党幹事長伊吹文明は「政策の狙いを堂々と説明する姿勢を取らなければならない。逃げては駄目だ」と、あくまで制度堅持の姿勢だ。自民党の選挙対策など、とんと頭にないとしか思えない。無理もない。伊吹の経歴は大蔵官僚出身であり、きっと財政再建至上主義と役所の無謬性信奉者に違いない。優秀な幹事長は、国民世論の動向を動物本能でかぎ取る能力があるものだが、その時代は終わったのかもしれない。
後期高齢者問題のとらえ方を、幹事長のみならず、首相、官房長官も含めて、「説明不足」に帰結させているが、誤算の第一は、問題の所在はそこにはないことに気づかないことだ。すべて75歳で線引きするという制度そのものの根幹に根ざした、戦後まれな大失政にあることが分からない。差別的に線引きした新制度で、2倍のスピードで保険料を上げてゆく、これなくして新制度は成り立たない。厚労省官僚の有名な発言「高齢者に痛みを感じ取ってもらう」が、それを如実に物語っている。厚労相・舛添要一の「8割が負担減」という発言は、苦し紛れについた「ついてはならないうそ」だ。制度を強行採決により実現に至らしめた元首相・小泉純一郎は、「時間がたてば感情的議論は収まってくる」と述べているが、実に甘い。
テレビ、新聞などマスコミに来る投書の数は、こうした発言のたびに数百から数千に達するという。そういう異常事態にあることを知らないで発言している。新聞では産経だけが社説で制度を“礼賛”しているが、恐らく発行部数に影響が生じているに違いない。反自民感情は、今後年金天引きが繰り返されるたびに増幅されるのだ。伊吹らは後期高齢者問題を野党の対自民党戦略と受け取って、反論を展開しているが、これも違う。今回の場合は、野党は国民のかってない憤りの上に乗っているだけだ。国会対策でことが片付くというのも大誤算だ。そしてもう一つ、政府・与党首脳が気づいていない重要な問題がある。それは制度を撤廃か凍結しない限り、民主党政権が実現しかねない点だ。実現すれば結局制度撤廃となる可能性が強いことである。政党支持の地滑り的な移動の音が聞こえないのだろうか。
政府・与党は、恐らく国会終了後の6月末に改善策をまとめるようだが、改善では問題は解決しまい。少なくとも換骨奪胎か、凍結くらいの対応でないと、選挙に勝てまい。国会が終了すれば野党は、地元選挙区で「撤廃」を訴える。伊吹が11日、税制を軸に今秋解散の可能性に言及したが、ピントがまたもずれている。税制などはテーマにならない。秋の選挙は“姥捨解散・爺捨選挙”だ。おそらく「撤廃」と「制度改善」では選挙戦術上歯が立たないであろう。自民党に忠告する義理はないが、今こそ「過ちを改めざる、これを過ちという」という論語をかみしめるべきだ。財源がないなどの論議は、当面は元の制度に戻すことでしのげるはずだ。そして消費税の封印を解いて、福祉目的税としての財源確保に方向を転換すればよい。勇気を持って早期に消費税の大網を掛けることだ。後期高齢者医療制度などという差別的制度に固執するより、よほどまっとうな政策だ。
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