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2008-05-08 08:47
日中首脳会談の政権浮揚効果は微少
杉浦正章
政治評論家
「各論置き去りの総論成功」でプラス・マイナス・ゼロというのが、5月7日の日中首脳会談の評価だろう。首相・福田康夫は、就任以来始めていってよいほど首相としての存在感を示したが、20%前後の危険水域を低迷している国民の支持率好転につながるものではなかろう。政権浮揚効果は微少だ。従って福田が窮地にある政局の構図は変化しまい。「戦略的互恵関係」という大網をかけて、今後の日中関係を律し、歴史問題を「直視し」と軽く触れただけの共同声明は、日中関係の前向きな長期展望を可能としたものであり、掛け値なしに評価できるものだ。内政で窮地に陥った福田と、チベット、オリンピックという政権基盤を揺るがしかねない懸案を抱えた主席・胡錦涛の間で練り上げた“甘い関係”だ。胡錦涛の「暖春の旅」路線を確かに裏付けるものだ。
しかし総論で美辞麗句は並んでも、国民の支持に直結する問題、つまり毒ギョーザ、東シナ海ガス田、日本の国連常任理事会入り、チベットなど当面の重要課題で、結論を得なかったことは、両国間に火種が常在し続けることを物語っている。賞味期限の切れたパンダ外交が復活しても、もう喜ばれる段階ではない。毒ギョーザ事件では、福田が「断じてうやむやにできない」と述べたと言うが、進展はない。強い言葉が、国内向けかとむなしく響くばかりだ。「日中双方で捜査と協力」と福田は強調するが、日本の警察当局からしてみれば、「捜査はし終わって、もうすることはない」のが実情だ。これほど中国側の「非」が明確な問題で、福田は踏み込めなかったことになる。これでは支持率につながらない。
ガス田問題は「大きな進展」があったと言いながら、「今発表できない」と言う。このギャップは何に由来するのだろうか。東シナ海の中間線をまたぐ開発区域の設定をめぐって、中国側に国内説得の問題が残っているのだろう。胡錦涛は「問題解決の展望が見えてきた」と慎重な表現である。福田が大喜びする根拠が薄弱だ。日本の国連常任理事国入り問題では、共同声明で「日本の国連における地位と役割を重視する」としたものの、それ以上の踏み込んだ意思表明はなかった。3年前、国連常任理事国入り問題が、中国国内で激しい反日感情を呼んだのは記憶に新しいが、中国の国際戦略の厳しさを改めて感じさせるものだ。産経新聞が社説で「常任理事国入りに柔軟姿勢」と書いているが、これは甘い誤判断だ。日経新聞などの「これまでと同様に明確な支持は示さなかった」という判断が正解だ。
チベット問題で、福田は中国の対話の決断を世界に先駆けて「高く評価」した。これには胡錦涛も喜んだだろう。国際的な孤立から“脱却”したからである。オリンピックへの首相出席も、最終的言質はともかく、「前向きに検討」と言えば胡錦涛もメンツが立つだろう。中央各紙の社説を見ると、朝日、読売、産経、日経の各紙は、総論と各論を並列で論じ、各論に進展のなかったことに失望感を表明している。毎日だけは「おおらかに互恵関係育てよう」と総論の評価を前面に出している。とにかく国民の対中外交への“欲求不満”は、首脳会談で解消された形ではない。自民党総務会長・二階俊博が「必ず支持率は上がる。これ以上、下がりようがない」とピントがずれた発言をしているが、甘い。この首脳会談の内容では、プラスには作用しまい。サミットも票にはならないことが過去に立証されている。
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