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2008-04-22 08:13
中国のネット操作は「諸刃の剣」
杉浦正章
政治評論家
カルフールとギョーザで共通項を求めるなら、ネットを使った「言論操作→大衆の呼応→沈静化操作」の構図である。これに中国政府または共産党の機関が干与していることは常識とされる。インターネット時代の見事な大衆操作術である。しかし中国政府首脳は、こうした動きが「諸刃の剣」となって自分の身に降りかかってくる恐怖を感じていないのだろうか。中国のインターネット上で起きている“扇動”は、仏大手スーパー「カルフール」に対する不買運動に続き、「チベット独立」に反対するデモ行進や、チベット問題に関する米議会決議への抗議から、「ケンタッキー・フライド・チキン」の不買を訴える動きまで生じている。当局もデモを黙認し、一時は全国規模の広がりを見せたが、中国政府は沈静化に乗り出した。
毒入りギョーザ事件は発生当初は全く報道されないままだったが、2月1日になって新華社系の新聞「参考消息」が「日本メディアが『毒ギョーザ』事件をあおる」との見出しで伝えたあと、例によってウェブ上に事件へのコメントが出始めた。一般市民は知らないはずなのに、「日本の自作自演」といったコメントが駆け巡った。ついで検疫総局の副局長魏伝忠が、日本発生を示唆するような発言をした。ネットを使った見事な世論操作である。この傾向は、99年の反米デモ、05年の反日デモでも見られたことだが、最近ではより巧妙化する傾向にある。中国における13億人強の全人口に対するインターネット・ユーザーの割合は、1割以上とみられている。このうち学生の半分以上がユーザーのようであり、加えて携帯電話も反日デモに使われている。大衆行動は主に掲示板への書き込みに反応して生ずるケースが多い。
ギョーザ事件の例のように、いったんエリートが見る出版物に掲載され、これが掲示板に掲載され、転載に次ぐ転載で広がりを見せるようだ。恐らく共産党宣伝部によって統制されているというのが、おおかたの見方である。「活字媒体での掲載許可→インターネット掲示板への転載→全国規模の伝搬」という図式であろう。しかし掲示板に掲載されただけでは、デモへとは発展しない。おそらく「掲示板掲載→デモ扇動組織の呼応」の構図がないと、デモには発展しないのだろう。ギョーザ事件がデモに発展しなかった背景には、当局の逆操作が感じられるし、カルフールに対するデモには当局の積極指示が感じられる。世界各地でのオリンピック聖火リレーの沿道への「中国人集合」にも、多かれ少なかれ当局の操作があるだろう。クアラルンプールで21日、チベットの旗を掲げた日本人3人が、たちまち中国系とみられる群衆に殴られた事件などを見ると、そう感じられる。長野にも「中国人集合」の動きがあり、警備当局はこの点一番注意が必要だろう。国際事件に発展しかねない。
こうしたネット操作は、ネット後進国中国特有の現象だろう。壁新聞以来の伝統もある。日本では“ネット扇動”などとてもできまい。小生は、パソコン通信の頃からのネチズンだが、掲示板で扇動者が現れなどしようものなら、すれっからしのネチズンに完膚無きまでに叩かれる。先進諸国の「ネット民主主義」はそれなりに成り立っている。中国の場合、当局が“操作”出来ているうちは良いが、もし敵対国家が一定の思惑を持った情報で中国の大衆を扇動したら、どうなるかを考えたことがあるのだろうか。また、一党独裁が成り立っているうちは良いが、これにひび割れが生じ始めると、ネットは凶器となることも覚えておいた方がよい。これをギリシャ神話では「ダモクレスの剣」、中国のことわざでは「諸刃の剣」と呼ぶ。
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