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2008-02-20 14:53
日本の開発援助の新たな試み
西川恵
ジャーナリスト
日本の開発援助で、いまフィリピン・ミンダナオ島で一つの試みが行われているので紹介したい。同島を拠点とするモロ・イスラム解放戦線(MILF)とフィリピン政府の間では2003年に停戦協定が結ばれた。04年10月から、マレーシア、ブルネイ、リビアの3カ国が国際監視団を送っているが、日本は比政府の要請で、06年11月にJICAの開発専門の職員1人を派遣した。この職員は監視団と寝起きをともにし、紛争地域の復興・平和構築の状況を見、どのような経済開発が可能か調査している。和平合意がまだ結ばれていない段階で、日本が開発援助にかかわったのは初めてだ。
日本が和平構築に最初からかかわった初めてのケースはカンボジア和平である。91年10月、パリ国際会議で紛争各派が和平に合意し、13年におよぶ紛争に終止符を打った。93年には国連の監視下で総選挙が行われた。しかしカンボジアのように紛争と平和が画然と仕切られた事例は珍しく、ユーゴスラビア紛争のように、デイトン合意(05年)後も現地では混乱が続くのがふつうだ。
紛争と和平状態が明確でない時、日本としてどうかかわるか。和平にならなければ援助に踏み切らないというのではあまりに硬直的だし、国際情勢の趨勢と乖離している。そうではなく、紛争の後半から終結にかけての段階で、治安回復、和平構築の動きと同時並行して開発支援の準備を進めれば、和平合意後の再建への立ち上がりは素早く、よりスムーズになる。ミンダナオ島の小さな試みは、日本の開発援助の将来にとって大きな意味をもっているのである。
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