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2025-07-24 08:36

国民民主党と参政党は公約に沿った法案の提出を

倉西 雅子 政治学者
 去る7月20日に実施された第27回参議院選挙は、新興政党の躍進という結果をもって幕を閉じることとなりました。とりわけ、選挙区と比例区を合わせて国民民主党が17議席、参政党が14議席を獲得し、何れも二桁台の議席数を確保しています。これら両党が10を越える議席を得たことは、今後の日本政治の‘民主化’、すなわち、民意に沿った政治の実現において重要な一歩となるかも知れません。その理由は、何れの政党も、参議院選挙における法案提出要件を満たすからです。衆議院では20人を要するものの、参議院においては、法案提出に必要となる議員数は衆議院の半数となる10人です。この要件に照らせば、今般の選挙で10以上の議席を得た国民民主党も参政党も、自らの政党単独で国会に法案を提出することができるのです。

 民主主義という価値は制度化されなければ実現せず、とりわけ立法過程の入り口となる提案権(発議権)は重要です。入り口での規制が強ければ強いほど、大政党による権力の独占が起きたり、民意が遮断されたり、あるいは、歪曲されてしまうリスクが高まります。日本国の立法過程を見ますと、国政レベルでは国民発案の制度は導入されていませんし、上述したように、議員提出法案には一定の制限が付されています。現状にあって国会に提出される法案の大多数が政府提出法案が占めていますので、法案提出権は、事実上、大政党にして与党である自民党によって凡そ独占された状態が続いてきたのです。そしてこの状態は、要件を満たす状況下にあっても積極的に議員提出法案を作ろうとしない野党側の‘怠慢’によって助長されてきたとも言えましょう。

 由々しき現状からしますと、今般の国政選挙にあって、国民民主党と参政党が、参議院において法案提出要件を満たしたことは、一つの可能性を開いています。両党の勝因は、タブーや‘常識’を破って外国人問題等を提起すると共に、政治に対して目に見える形での問題解決を求める国民の声に応えたからとされています。選挙区では前回の参議院選挙の投票率を6.46ポイント上回り、58.51%まで上がったのも、両党に対する国民の期待を示しているとも言えましょう。つまり、法案提出権を行使し得る立場となった以上、両党の義務、否、国民から委任された仕事とは、一票を投じた国民のために、問題解決のための具体策を明記した法案や改正案を国会に提出することにあるのです。

 仮に、今後、両党が、矢継ぎ早に多くの国民の期待に応える法案を提出するとすれば、国民の多くは、政治の役割を実感すると共に、ようやく日本国でも、システムとしての民主主義のメカニズムが働き始めることにもなります。民意⇒政策⇒問題解決という最も基本的な民主主義の流れが動き出すからです。国民の声が政治に届く実例を目の当たりにすれば、無関心ともされてきた若者層も政治への関心を高めることでしょう。その一方で、国民向けのアピールは選挙期間限定であり、何れの政党であれ、国民の声に耳を塞いで怠慢を決め込んだり、二桁の議席数は政治的ディーリングの材料に利用するともなれば、国民の失望は計り知れません。いわんや、選挙の争点となった外国人問題、物価高、税や社会保険料負担の増加などの諸問題を無視し、‘手のひら返し’などしようものなら、国民の期待は失望を越えて怒りに変わることでしょう(外国人問題への対応の一点のみに重きを置いて、参政党に投票した有権者も多いはずでは・・・)。従来の選挙では、選挙の結果によって候補者の当落や議席数が決定した時点で、国民の関心は薄れてゆきましたが、今般の選挙にあっては、国民が政治に対して目が離せない状況が続いています。日本国の未来はどちらの方向に進むのか、今や、分水嶺にあるように思えるのです。
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