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2024-12-10 11:40
OECDの世界経済予測
真田 幸光
大学教員
12月4日に、科学的で客観的、無中立的であるとされる国際機関である「経済協力開発機構(OECD)」は世界経済予測を発表した。そして、OECDは、「保護主義の再燃で貿易の回復が妨げられなければ、世界経済は今後2年間安定的に成長するであろう。」との明るい見通しを示している。そして、2024年の世界経済の成長率は3.2%、2025年と2026年は3.3%と予想した。インフレ率の低下、雇用の拡大、金利の引き下げにより、一部の国の財政引き締めが相殺されると見ているということである。
本年9月の予想では今年と来年の成長率を3.2%としていたが、2025年の予測は上方修正され、2026年の見通しは今回初めて公表された。OECDは、「昨年落ち込んだ世界貿易が、輸入制限措置が世界的に増えているにも拘わらず回復していることを好感、来年は数量ベースで3.6%増加する見込みである。」と予測している。一方、OECDは、「貿易摩擦と保護主義の高まりでサプライチェーンが混乱し、消費者物価を押し上げ、成長に悪影響を及ぼす恐れがある。」と米国でトランプ政権が再登場を意識した警告を発している。米国のトランプ次期米大統領が主要貿易相手国に対し関税を引き上げる構えを見せており、貿易の見通しが不透明になっていることを意識したものである。
OECDは、その米国経済については、「雇用市場の冷え込みにより消費が鈍化する。」との見方を示し、今年の成長率は2.8%となり、2025年は2.4%、2026年は2.1%に更に鈍化すると予測している。中国本土も金融・財政政策の緩和にも拘わらず、2024年の4.9%から2025年は4.7%、2026年は4.4%に減速する見込みであるとし、その理由を、「中国本土人民は、備えの為の貯蓄が高水準となり、消費者支出が低迷している。」と指摘している。一方、ユーロ経済圏は欧州中央銀行(ECB)の金融緩和が投資を促し、労働市場の引き締まりが個人消費を支えると予想した上で、経済成長率は今年の0.8%から2025年は1.3%、2026年は1.5%に加速するとしている。英国の経済成長率は、今年は0.9%、2025年は1.7%と予測し、実質所得の増加と英国政府支出の増加が増税の影響を相殺すると見込み、その上で、2026年は1.3%に鈍化するとしている。
我が国・日本の経済成長率は、今年はマイナス0.3%となるが、景気刺激策を追い風となり、2025年は1.5%のプラス成長を回復し、2026年には0.6%と再び成長が鈍化すると見込んでいる。こうした見通しを示した上で、OECDは、「インフレ緩和に合わせて日本を除く大半の主要中銀は慎重に金融緩和を続けるべきである。」との見解、提言を示した。ほとんどの国は政府の財政が圧迫されている為、債務負担を安定させる為に断固たる行動を取る必要があると訴えたものである。
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