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2007-10-29 14:36
中国の環境問題をめぐる2つの見方
西川恵
ジャーナリスト
最近、東京で開かれたフォーラムで、中国の環境問題をめぐって興味深い議論が展開された。この議論は折に触れて繰り返されると思うので紹介したい。一言で言うと、民主主義を欠いた権威主義体制の中国で抜本的な環境対策はあり得るのか、という命題だ。
これに否定的な日本の経済学者は、自身の調査などを踏まえて問題を指摘した。まず一党支配の下での、透明性、開放性の欠如である。中国では企業の在庫統計一つあてにならず、ビジネス循環予測が描けない。どのような環境汚染が起き、どのような被害を出しているかも把握できない。環境NGOの問題もある。日本もそうだったが、環境問題には住民側の粘り強い運動が不可欠になる。しかし住民運動が恒常的なものとして存続するには、資金を管理する銀行口座が必要になる。ところが中国政府は反政府的な結社が組織されることへの警戒から、任意団体の口座開設を認めていない。「権威主義体制の国にとって、環境問題は最も不得手な分野だ」とこの学者は述べた。
これに対して、日本の自動車メーカーの元幹部から、「世界貿易機関(WTO)加盟後、中国の環境意識は急速に変わっている」との反論が出た。中国企業は外資企業と合弁を組むことで環境問題の重要さに気付き、環境技術の導入に積極的になった。中国政府も輸出促進の点から、環境基準の遵守を指示してくる。「マクロの視点からは見えにくいが、外資側が環境対策の必要性を説明し、中国側も認識を深める。合弁企業は中国人の環境意識向上に重要な場を作っている」と指摘する。中国の輸出品の3分の2は合弁企業が占め、中国に進出する外資企業の増加は、その分野における環境意識の向上に役立っているという。
中国の環境問題は、こうした積み重ねによって徐々に改善されるのか。それとも権威主義的な体制下では、そもそも根本的解決はあり得ないのか。この2つの論点は、今後中国の環境問題を見ていく時の手がかりを提供すると思う。
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