そして、今回、中国はこの予防原則を持ち出して、「日本の海産物は危ないかもしれないから、予防原則を適用して禁輸した。」と言って来るかもしれないな、と思っております。ただ、科学的証拠が不十分という根拠は出せないでしょう。EU vs. アメリカでもいつもそうだったのですが、「安全でないという証拠を出せ」という日本に対して、中国は「安全だという証拠を出せ」という悪魔の証明を求めて議論が膠着する構図です。ただ、それでも中国の主張には無理があるので、私は日本がWTOに提訴すれば勝てると思います。しかし、法戦における中国の能力を侮ってはいけません。中国の通商関係者は、相当にレベルの高い議論を展開する能力があります。そして、福島原子力発電所関連で韓国が取っていた禁輸措置について、2019年、日本は韓国に敗訴した事を忘れてはなりません。ただですね、今のWTOの紛争解決手続きは、最終審となる上級委員会において、アメリカ(トランプ政権)が委員の選任をブロックしてきたため、欠員による機能不全です。仮に日本が第一審(パネル)で勝ったとしても、中国が上訴してしまえば、上訴審の可能性が閉ざされているため塩漬けになる可能性大です。