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2007-10-09 14:24
郵政は民営化の道を歩みはじめたが
木下博生
(財)日米平和・文化交流協会理事
このテーマは、国際的な問題を論ずる「議論百出」の場にはそぐわないのかも知れない。しかし、長期的にみれば国際的な影響が出ないとも言えないので、10月1日に民営化の道を歩みはじめた旧郵政公社の民営化について触れてみたい。
私がここで取り上げるのは、いくつかの会社に分かれた中の一つ、「ゆうちょ銀行」である。新たに発足した本行は、旧郵便貯金の資産180兆円を引き継いで、日本最大の銀行となった。改めて説明するまでもないが、昔の郵便貯金は、庶民が貯めたお金を郵便局に預けたもので、それをまとめて旧大蔵省が財政投融資の資金として運用していた。
政府が預かる資金であるから、払い戻しには日本政府の保証がついていた。金利も比較的良かったから、庶民は安心して郵便局に預けた。そうやって預けられた資金の総額は、永年にわたって増え続け、200兆円を遥かに超える額となったのである。高度成長の時代には、国内の資金需要も多かったから、集められた資金は、大蔵省が財政投融資資金として、日本開発銀行などの政府関係金融機関を通じて、民間に貸し出した。また、国債が発行されるようになると、国債の購入資金にも充てられた。
郵便局の仕事は、お金を集めることだけで、その運用は、一切、大蔵省が責任を持っていたのである。その時代は終わりを告げ、民営化ブームに乗って郵便貯金も「ゆうちょ銀行」となった。預金を集めることと送金事務をやることは、昔からの経験があるからいいだろう。問題は、集めた資金の運用である。銀行のトップには民間銀行の元経営者が就いているから大丈夫だろう、と言う人がいるが、それほど単純なものとは思えない。
200兆円近い金をどうやって運用するのか。国債だけを保有していれば済むのなら、ことは簡単である。運用で利ざやを稼いで、預金者に還元するには、貸し出し業務もしなければならない。それを旧郵便局長さん達に、うまくやって貰えるだろうか。石原都知事が始めた「新銀行東京」が、今どうなっているのかを見たらよく分る。個人ローンの貸金業者の苦境やアメリカのサブプライムローン問題を見ても、金貸しの事業は、大変難しいものなのである。万一、180兆円の銀行が破綻するようなことがあったら、それこそ金融恐慌は間違いない。安全にそれを回避する方法は、現在の貯金者が、徐々に貯金を減らして、自ら国債を買うなり、他の金融機関に資金を振り分けることではないだろうか。
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