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2023-02-28 18:45
ポストコロナで、G.オーウェル『1984』と『動物農場』が見えてくる-「日本への遺言」ある民俗学者の記録
大井 幸子
国際金融アナリスト
このところは三寒四温で、陽射しは春のようです。日本橋の街中も人通りが戻り、インバウンドが増えてきた、いよいよコロナ明けか?といった話題も多いですね。2020年にコロナが始まりもう3年が経ちます。この間、実に大きな社会変動が起こりました。人々の意識も行動も変わってきたと思います。私は、これは全世界で同時多発的に起こった「かつてない規模の社会実験」だと考えています。では何のために誰が行ったのか?これまでの社会工学(ソーシャルエンジニアリング)や行動心理学などの成果を総動員して実施されたまさにグレートリセット(GR)へ至る第一歩です。GRのゴールにはG.オーウェルの描いたSF小説「1984」が待っています。
パンデミックのタイミングを考えると、2020年11月の米大統領選挙でトランプ氏を何がなんでも再選させないGR実現計画がスピードアップして進められたと想像できます。不正選挙で当選した正当性なきバイデン政権が2021年1月にスタートしてからは、本格的にGRの具体的な動きが始まり、それは私たちがまさに体験した社会変動だったと思います。具体的な動きとは、これまでのHIVやSARSよりもさらに恐ろしいとされる疫病の流行、人体にどんな影響があるかも未知な実験的なワクチン接種、そしてロックダウンという自宅軟禁と行動制限があり、私たちは会社に行けない、買い物にも出歩けない、工場は生産を止めるといった具合で、生産も消費も経済活動が麻痺するような状況となりました。「三密」を避ける、距離を取る、声を出して話せないなど、まるで人間同士の絆を断ち切るような行動が推進されました。これでは市民社会は成り立ちません。当然、多くの人が集まる会食や集会、祭りや教会の祈祷など宗教行事も自粛となりました。その間、疫病で苦しむ世界中の人々の画像が流れ、人々は恐怖に陥れられました。さらに、人と人との絆が分断されるなか、例えば米国ではワクチン推進派と反対派との対立が生み出されました。立場の違いを許容する「寛容の精神」は失われ、一方的な「レッテル貼り」や意見や立場の異なる人を誹謗中傷する集団ヒステリーが横行しました。
そして、政府が市民一人ひとりに直接現金を配るという前代未聞の支給金の支払いが行われました。米国では小切手が個人に郵送され、日本では10万円が国民の口座に振り込まれました。それから、現金を触りたくないという人が増え、政府がカード支払いにインセンティブをつけるなどのキャンペーンもあり、キャッシュレスの動きが進みました。さらに、バイデン政権は急激な「グリーンニューディール」を推進してきました。2021年1月政権発足早々、カナダと米国を繋ぐキーストーンパイプラインが中断され、原油価格が値上がりし、石油業界の新規投資は凍結され、ガソリン代が高騰、インフレが始まりました。グリーンエネルギーは世界同時多発的にEV生産への傾斜を促してきました。誰がそんなに高価なEVを大量に必要としているのか?私には疑問ですが、消費者の需要とは関係のないところで、需要が作り出されていくようです。そしてこの時期は、ロックダウンが解除され、抑えられていた人々の消費需要が膨らみました。が、サプライチェーン逼迫の影響で供給が追いつかず、物不足で物価上昇の事態となりました。例えば、新車については、急なロックダウンで3ヶ月以上も工場が止まり、生産ライン再開には数ヶ月要したために入手困難という事態が起こりました。そこで、新車を諦め、やむをえず中古車購入へ向かったため、中古車が8倍以上に跳ね上がる異常事態となりました。
こうした世界同時多発的なロックダウンとグリーンニューディールが相俟って、物価高と資源価格が高騰し、「人為的なインフレ(コスト・プッシュ型インフレ)」が起こりました。この動きは2022年2月24日にロシアがウクライナ侵攻を開始し、さらに拍車がかかりました。そして、同年3月から米国中央銀行FRBはインフレとの戦いを開始し、猛スピードで政策金利を上げ始めたのです。2020-22年にかけて、人為的なインフレ、ガソリン代、電力料金、食料価格の値上がり、金利上昇によって住宅ローンや自動車ローンなどの毎月の利払い額が1年前から2倍近くに膨らみ、一般世帯の可処分所得は目減りしてきている。さらに、今年2023年には更なるインフレと失業、景気後退(リセッション)、そして、株価下落、住宅価格下落といった資産価値の下落が予想され、米国社会全体が窮乏化する局面に来ています。
窮乏化に向かう国民を「大き過ぎる政府」が囲い込み、さらに略奪し、家畜化しようとしている。これが「人類家畜化計画」、まさにオーウェル『動物農場』が実現するかもしれません。その予兆として、政府が個人の思想や行動を監視するツールが着々と導入されてきています。以下、列挙してみます。
・GPT-3、チャットGPT などのAIで個人の思考停止を狙う
・EVで人々の移動を監視
・デジタル通貨で人々の経済行動を監視
この辺りはオーウェル『1984』に出てくる「ビッグブラザー」が人々の思想や行動を監視・取り締まるデジタル・ファシズムの様相です。そこからさらに、「ビッグブラザー」は市民生活に必要なライフラインを剥奪しようとしています。具体的には、水・食料・熱源(ガスや電気など)の補給を断ち、人々を恐怖に陥れ、徒歩15分圏内の小さな地域に閉じ込め、移動の自由もなくなる。まさに「人類家畜化」=『動物農場』、オーウェルのSF小説が現実となります。オーウェルの世界が実現した時、これまでの人権や人間性を探求してきたに深く哲学や思想、宗教、文化や芸術など「人間を人間とせしめてきた」文明そのものが終焉することになります。
以上、米を中心にGRが目指すコロナ後の世界像について述べました。では日本はどうなる、どうするか?日本には「日本を日本たらしめる」伝統や文化、宗教観があります。コロナ禍で中止が続いたお祭りなどの伝統行事が再開され、日常が戻ることを期待します。しかしながら、それだけでは不十分です。先日、神崎宣武氏(民俗学者)のドキュメンタリー「消えゆく“ニッポン”の記録」を見る機会がありました(NHK、初回放送2023年2月11日午後11:00)。神崎氏の実家は岡山吉備の山間の故郷で代々神主を務めています。氏自身は武蔵野美術大学で学び、民俗学者、宮本常一教授に師事し、50年以上に渡り東京と故郷を往復しながら全国でフィールドワークをし、日本各地の文化について多くの本を書かれてきました。そして、神崎氏は過疎化が押し寄せる故郷の村で神主を務めながら晩年を迎えられ、自身の仕事を「日本の遺言として残したい」を言われました。歴史を振り返ると、明治維新の廃仏毀釈のときにも、日本の伝統や文化が失われそうになったことがありました。先祖代々それぞれの地域で独自に大切にされてきた神仏習合の祈りの形が、明治政府の上からの国家神道画一化の動きによって破壊されそうになったとのことです。それでも明治維新から150年の近代化・西欧化の荒波に晒されながらも、大切に守られてきたものが、この先「日本の遺言」となってしまわないようにしたいものです。
コロナの終わりが見えてきたとはいえ、まだ半年から1年は危機が去ったとは言えないと思います。その間に日本の失いつつある日常のくらしや伝統を見直し、過去に逆戻りするのではなく、未来に向けてどう進化させていくのか、積極的かつポジティブに考え、行動する準備をしたいと考えます。
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