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2021-12-18 22:13
安倍元首相へ「老兵は死なずただ消え去るのみ」
伊藤 洋
山梨大学名誉教授
安倍元首相、在任中には2020オリンピックを機に「イの一番」に「国賓」として招待するとまで格上げしていた習近平氏への上げ底扱いはどこへ行ったのか?退任した今は全くの手のひら返し。このところの鼻息は東シナ海の白波を激浪にせんかとまでの勢いで、北京政府を挑発する。なにしろ氏の尊敬措く能わざる祖父は満州国建国の父の一人だ。「安倍晋三元首相は1日、台湾で開かれたシンポジウムに日本からオンライン参加した。緊張が高まる中台関係について、『台湾有事は日本有事であり、日米同盟の有事でもある』と述べ、中国側が軍事的手段を選ばないよう、自制を促す取り組みの必要性を訴えた」(2021/12/01朝日新聞)。
安倍氏はここで、日本と台湾がこれから直面する環境は緊張をはらんだものとなるとして、台湾への武力侵攻は日本に対する重大な危険を引き起こすものであって、台湾有事はそのまま日本有事であり、日米同盟の有事でもあるからして、この点の認識を習近平主席は断じて見誤るべきではない、とまで踏み込んだという。これは何と言おうとドスのきいた脅迫である。岸田内閣が対中政策として自分との距離が遠い上に、足許の山口県選挙区の減区問題の中で有能な林芳正氏が外務大臣ポストに就いたことの不満もまたボルテージを上げているのでもあろうか。が、安倍氏は最早長老として、政治の第一線から退いた身だ。過激な発言はしない方が良い、現職のリーダーが迷惑する。
そもそもこの国の対中国政策は、あの田中角栄内閣による大事業=「日中国交回復」で「一つの中国」を承認する形で外交関係の基軸を定めた。それゆえ、我々日本国民にとって、台湾問題は原則的に中国の「内政問題」なのである。上の朝日新聞記事と同じ日の共同通信記事によれば、安倍氏の上記発言報道を受けた同氏の子分筋の高市早苗自民党政調会長が、年明け発行の「月刊Hanada」新年号で、櫻井よしこ氏との対談で「私が総理ならガッツリ受け止めて、日台合同訓練を含めてやりますよ」と発言しているという。言うまでもなく「日台合同訓練」とは紅軍に対抗するための軍事訓練のことである。冗談とはいえ、いまや政権与党幹部の口からここまで踏み込んだ発言が軽々と発せられる程になっている。憲法の平和主義など何処吹く風と言わんばかりである。
こういう日本の政権中枢の傍若傍若無人発言に対して中国側は「『このままだと必ず焼け死ぬ』と脅しまがいの警告を発している」(朝日新聞)という。あの華春螢外務次官補の発言だというから、これは中南海政権中枢の憤懣と聞くのが至当であろう。「老兵は死なずただ消え去るのみ」(D.マッカーサー)。安倍晋三氏にはこの言葉を心こめて送りたい。そして、国内では耳目を引かなくとも国外にあってはなお政治的存在は残存継続し、その政治的発言は当人が思っているよりをはるかに大きく響くものだということを知っておいてもらいたい。
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