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2021-04-23 20:33
日米首脳会談は歴史の潮目の大きな変わり目か
伊藤 洋
山梨大学名誉教授
「日米首脳の共同声明に『台湾』が明記された。中国の台頭に強い危機感を抱く米国に引きずられるように、日本が足並みをそろえるとのメッセージを発信する形になった。人権侵害に示した『懸念』を含め、中国側は猛反発しており、関係諸国に与える今後の影響は、見通せない」(2021/04/18朝日新聞)台湾海峡では、「天気晴朗なれど、波高し」という状況が頻々と聞こえてくる。この海峡と台湾を挟んで反対側の尖閣群島の周辺の波高値もまた極めて高い。この二つの海域の何れか一方か、または両方でか、銃弾が飛び交う事態が現実味を帯びてきたこの頃である。
こういう中で行われた菅・バイデン日米首脳会談は、その共同声明で「中国が軍事的圧力を強める台湾海峡について『平和と安定の重要性を強調する』と明記し、『両岸問題の平和的解決を促す』との文言を入れた。(中略)米国の『核を含むあらゆる種類』の能力を用いた日本防衛への揺るぎない支持を明記した。米国による防衛義務を定めた日米安全保障条約第5条が沖縄県尖閣諸島に適用されると再確認し『日本の施政を損なおうとするいかなる一方的な行動にも反対』と足並みをそろえた。首相は日本の防衛力を強化する決意を伝えた。米軍普天間基地の移設を着実に推進すると申し合わせた」(2021/04/18日経新聞)とのことだ。
やれやれ、表現はトーンを落としているものの佐藤・ニクソン共同宣言以前の世界へ逆戻り、歴史の大きな節目にあることが明確になった。これをもって二つの海域、すなわち台湾海峡と尖閣諸島における日米兵力の臨戦態勢と「二つの中国」の復活宣言ではないのか。ここで認識しておかなくてはならないことがある。台湾には米軍基地は一つとして存在しない。6年以内に中国が台湾に侵攻するという米国の軍事筋の予想が万が一にも的中したら、上の合意からして台湾を米国が軍事的に援助することになり、その時にはグアムだけではなく、沖縄をはじめすべての日本の国内基地が前線となる。そのとき、日本の自衛隊は何をしているのであろう。日米安全保障条約によって在日米軍の軍事援助及び支援を要請されるのであろうか。それに応えるなら核をも持つ米軍と共に「参戦」することになる。
それは日本国憲法第九条の不戦の誓いと齟齬する脱法行為ではないだろうか。もしそうなれば、今日まで手をこまねいているだけで右も左もなんの定見も持ち得ずにいたずらに争論してきただけの日本の戦後憲政の欺瞞が一気に露出することになるだろう。その責任は、この齟齬を解消する力強い知性的な指導者を輩出できなかった日本国民すべてにあるともいえよう。直近の当面、北京の「中南海」の動きが気になる神経戦が始まることであろう。東アジアに火の手が上がらぬよう、理性の支配を心から望む。
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