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2021-02-23 14:12
華国鋒生誕100周年座談会が意味するもの
松本 修
国際問題評論家(元防衛省情報本部分析官)
2月20日、中国共産党の党史学習教育動員大会が北京で開催され、習近平党総書記は「全党で党史学習教育を行うことは、党中央が党の100年という歴史の新たな起点に立脚し、中華民族の偉大な復興戦略の全体的な局面と、この100年で未曾有の世界の巨大な変化を統合し、全党・全国を動員し自信を持って社会主義近代国家を全面的に建設することに専心するための重大な決定である」と強調した。18日の旧正月休暇明け直後に開かれた大型会議が、7月1日の中国共産党創設100周年行事を意識したのは言うまでもないが同じ20日、人民大会堂で開かれた華国鋒生誕100周年記念座談会に小生は注目した。以下、その概要をみていこう。
華国鋒生誕100周年記念座談会は、習総書記の清華大学学友の陳希党組織部長(政治局委員)が主宰し、政治局常務委員である王コ寧党書記処書記(筆頭)と韓正副総理、政治局委員である孫春蘭副総理と張又侠中央軍事委員会主席が出席した。座談会で演説した王書記は「華国鋒同志を記念することは、同氏の強い党人気質や党への忠誠心、初心を忘れず人民を思う深い気持ち、実事求是で確かに業務を行うという素晴らしい作風、光明にして磊落で清廉潔白な品位に学ぶということである」と称賛した。また同座談会には中央党史・文献研究院院長、国務院副秘書長、中央軍事委員会政治工作部主任補佐、山西省副省長が出席して意見を相次いで述べたという。これは昨年9月9日に開かれた楊白ヒョウ(にすいに水)生誕100周年記念座談会と比較したら、規模も内容も全く異なり、レベルアップしたものである(同日付「議論百出」拙稿参照)。しかし、こうした故人を記念し、追悼する座談会を開催する意味は一体何であろうか。当然、背景には「習近平の影」が色濃く差しているが、この2月19日が鄧小平の命日、逝去24年にあたったことは邦字メディアにとどまらず、中国メディアでも黙殺されていた。現在のメディアの主潮は毀誉褒貶相半ばするが、習近平個人や習近平体制にある。
2月21日の読売新聞「あすへの考」は、杉山裕之編集委員による習近平体制の歩みに関する大型記事であったが、来年に予定される第20回中国共産党全国代表大会(第20回党大会)で、毛沢東以来の「党主席」制度復活への懸念を強調していた。しかし、同記事でも1982年の第12回党大会で「十年の災厄」文化大革命の悲劇を阻止するために「党主席」制度廃止に踏み切ったのが、当時の鄧小平の決断であったことには触れられていない。そして、こうした流れから現行の習近平体制が、言わば「鄧小平路線」修正のために共産党創設100周年にかこつけて、楊白ヒョウ、華国鋒を称賛して新たな歴史認識、歴史観を産み出そうと意図しているとしたら穿ち過ぎの見方であろうか。
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