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2007-07-17 09:58
平和主義の国・日本をいかにして作り上げるか
河合正男
白鴎大学客員教授
イラクでは、米軍が増派されても自爆テロは続発し、国内の政治勢力の対立が弱まる見通しもつかない。パレスチナでは、内部対立が激化し、イスラエルとの和平交渉どころではない。オスロ合意も風前の灯である。
中東地域について講義していると、学生達から「先生、中東での戦争はいつなくなるんですか」と聞かれる。全く性急な学生たちである。先生が何でも知っているわけではない。それにしても、日本としては、世界の紛争解決のため、もっと目に見えた貢献が出来ないものであろうか。特に中東の問題は重要である。1970年代の石油危機の時代に、わが国の石油輸入の中東依存度は70%台であった。今や、90%台である。中東の問題はまさに他人事ではない。
これは、外務省の後輩達への苦言ではない。むしろ、日本と言う国の在り様についての思いである。「戦後レジームからの脱却」と言われる。集団的自衛権の問題も大いに議論すべきであろうが、議論すべきは自衛隊の役割だけではない。平和主義の国、日本が「戦後の一国平和主義」から脱却して、世界の紛争解決のためにもっともっと貢献する、真の平和国家を如何にして作り上げていくかの議論も大いにすべきである。
「日本としては、やれることは全てやっているではないか」と言われるかも知れない。そうかも知れない。これまでのわが国の意識からすれば限界かも知れない。しかし、私がいたノルウェーの平和外交を思うと限界ではない。ヨーロッパの大戦に蹂躙されたノルウェーは、平和こそ小国のために大事だ、そのためには自らも世界平和の実現に汗をかくべきだ、との意識が強い。やはり、わが国の国民や政治家の意識とは少し違うようだ。
ノルウェーの平和外交では、紛争国と長年かかわりのあった民間人等が活躍することが多い。しかし、それで外交官の仕事がなくなるわけではない。両者が相補って仕事をする。私も、ある外交交渉でルワンダの大統領と直談判をした際に、独立後間もない同国の中央銀行総裁を務めたことのある、日銀出身の服部正也氏の助力を得て成功したことがある。
改めて、日本がどのように世界の紛争解決に貢献する、真の平和主義国家になるのかの議論が大事である。特に、国民を引っ張る政治指導者達の議論が重要である。人材も大事だが、平和外交を推進する日本のイメージが強まれば人材もいろんな分野で出てくるであろう。7月16日付けの日本経済新聞は、「グローバル社会の新たなルール作りに日本の影は薄い。参院選下の与野党の攻防は本格的な政策論争には発展せず、『小さな政治』に陥っている。それが超円安の背景にある」と説いている。「とてつもない国」日本が、世界平和のため何をすべきなのか、本格的な論争が必要である。それが、行動に移される時、アジアの隣人達も、平和主義国家、日本を理解してくれるに違いない。
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