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2020-09-14 16:05
不安な「菅新首相」の答弁能力
加藤 成一
元弁護士
9月14日投開票の自民党総裁選挙は、自民党の5派閥が支持する菅義偉官房長官が地方票もおさえての圧勝であった。いわゆる世襲議員ではない、久しぶりの「たたき上げ」総理の誕生に期待が膨らむのは筆者だけではないであろう。しかし、菅氏が内閣総理大臣となった場合には、国会等におけるその答弁能力の点で一抹の不安がある。
菅氏は、他の総裁候補である石破氏、岸田氏と共にテレビなどの討論会に出席し、他の候補と様々な政策論争をしている。同氏の基本的立場は安倍政権の諸政策の継承とされているが、討論会の模様をテレビで見て臨機応変の答弁能力に不安を感じる。例えば、9月8日のテレビ番組で、憲法改正に関して自衛隊を憲法に明記する理由について問われた菅氏は、「自衛隊の立ち位置が憲法の中で否定されているから、自衛隊を憲法上明記する必要がある」と述べた。しかし、この「答弁」は重大な誤りである。なぜなら、「自衛のための必要最小限度の実力組織である自衛隊は合憲である」とするのが長年の一貫した政府見解だからである。「菅新首相」としては当然このような基本的政府見解は熟知していなければならない。菅氏は早速翌日の官邸での定例記者会見で上記の通り「訂正」したが、「菅新首相」としての答弁能力に疑問符が付く「答弁」である。正確には、「自衛隊は政府による憲法解釈上は合憲であるが、憲法上の明文規定がないため、自衛隊の存在を憲法上明記すれば違憲論争に終止符が打たれ、その意義は大きい」と答弁すべきであろう。
のみならず、菅氏の答弁能力に疑問符が付く答弁はほかにもある。9月10日のテレビ番組で消費税の引き上げの是非を問われた菅氏は、少子高齢化の中で人口減少は避けられないとしたうえで、「将来的なことを考えれば行政改革を行ったうえで、消費税は引き上げざるを得ない」と述べた。しかし、翌日の定例記者会見では早速「今後10年程度は引き上げる必要はない」と述べ事実上発言を「訂正」した。コロナ禍にあり、国民の消費が大幅に落ち込み、野党は期限付き消費税ゼロを主張する現下の厳しい経済情勢を考えれば、たとえ将来のこととはいえ、今の時点で「消費税引き上げ」に言及すること自体、「空気」が読めず、「敵に塩」を送るような、極めて軽率で無神経・無防備な「答弁」と言わざるを得ない。今後、コロナ禍にあって、もし消費税が来るべき総選挙の最大の争点となれば、一度とはいえ、将来のこととはいえ、訂正したとはいえ、一旦は消費税引き上げに言及した「菅新首相」の下での自民党は、期限付き消費税ゼロを主張する野党陣営から総攻撃され、総選挙に大敗する恐れがある。
このように、「菅新首相」の答弁能力には不安を感じる。あとから何度も安易な「訂正」が許されない真剣勝負の国会論戦はなおさら不安である。内政、外交、安全保障など、山積する内外の重要課題に取り組み、米国、中国、ロシア、韓国、北朝鮮、インド、東南アジア、欧州諸国をはじめ、世界の各国首脳との外交交渉など、国益を増進し、国民の期待に応えるため、「菅新首相」には、何よりも「答弁」には細心の注意を払い、臨機応変の「答弁能力」を磨き上げて頂くことを切望する次第である。
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