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2007-06-20 14:53
地球社会を変える途上国世界
高橋一生
国際基督教大学客員教授
あまりにも多くのモノが、社会が、考え方が大きく変化し、変化について考えることそのものが陳腐なことがらに思える。何が変わらないかを考えることのほうに興味を覚える。しかし、小生の専門分野である途上国世界については、やはり基本的な変化をしっかりと押さえておくことが今後の日本のこれら諸国に対する対応を考える際に重要だと思える。外交全般についても、また一年少し先に発足する新JICAのありようを考える際にも必要な頭の体操である。多々ある重要な変化の中から地球社会を変えるという視点から数点を指摘しようと思う。今回はこの半世紀の国際開発の成功という所に焦点をあてようと思う。
開発の、さらには開発協力の成果は、と問う時、多くの人は極めて悲観的な答えをするであろう。確かに失敗例は枚挙にいとまがない。評価という作業が一つの大きな産業になりつつあり、ODAがその主要な対象になっていること自体それを証明しているのかもしれない。しかし、現実には世界はこれまでに4つの大きな成功の波を経験してきた。第1の波はNICSであった。1970年代の後半、韓国、台湾、香港、シンガポール等の台頭にOECD諸国は俄然強い警戒感を示した。フランスなどはこれら諸国を「野蛮な資本主義」と称し、輸出・財政等につき規律を求めるという主張を展開し、他のOECD諸国も大方それに同調するという状況になった。
第2の波は1980年代の後半から1990年代の中頃にかけてであった。このときの主役は東南アジア諸国であった。日本が売り込んで、世銀にこれを「東アジアの奇跡」と呼ばせたのはまだ記憶に新しい。第3の波が1990年代の半ばからの中国である。それに続く第4の波が2000年以後のインドである。この4つの波を通じて、途上国世界の人口の半分以上が、基本的には今後彼等自身の努力によって開発の諸課題に取組むことが可能になりつつあるといえる。まだまだ膨大な貧困層をかかえていたり、環境破壊のすさまじさは目を覆うばかりであったり、内部の諸矛盾をかかえていたりするが、自身の努力によって解決すべき、また解決しうることであろう。
これらはすべてアジアのドラマであり、1964年にグナール・ミュルダールが出版した「アジアのドラマ」と何たるコントラストをなすことか。あまりにも有名になったこの本でミュルダールは、アジアの貧しい人たちはあまりにも貧しいがゆえに文句さえも言わない巨大な群集であり、開発・発展は絶望的である、と指摘している。その絶望的アジアが開発のドラマの先頭をきり、いま世界の経済地図のみならず、政治地図をも大きく変えつつある。この開発の成功の波という視点からすると、さて第5の波はどこになるのであろうか、ということが極めて興味深い。皆さんはどこだと思いますか。
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