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2007-06-13 10:08
「寧辺」という罠
鈴木馨祐
衆議院議員
いわゆるBDA問題(北朝鮮の金融制裁がらみの問題)の解決が長引いている。もちろんこの問題は六カ国協議と金融制裁をリンクさせてしまったという意味で戦略ミスであるとかいろいろと評価はあるだろうが、ここではその議論には触れない。
私が懸念するのは、今後の展開についてである。日本政府はよほど腰を据えてかからないと、この問題で将来的に非常に大きなリスクを背負い込む可能性もあると私は考えている。北朝鮮が制裁の解除だけで無く送金まで要求することでここまでハードルを吊り上げることに成功し、結果として当事者であるアメリカを始め周辺国もBDA問題の進展の無さにストレスを感じ、心理的に非常にハードルが高い困難だと感じているのが現在の状況だとすれば、この問題が解決し、それに伴って北朝鮮がそれに応えて寧辺の核関連施設の停止措置を行った場合、六カ国協議の担当者、さらには世論において安堵感や達成感が漂ってしまう可能性があるのではないだろうか。実際問題として、北朝鮮が2月13日の合意から2ヶ月以内の初期段階措置の履行を反故にしたにもかかわらず、ほぼ非難の声が皆無であったこと、北朝鮮がハードルを「金融制裁の解除」の都合よい解釈により更に引き上げようとしてもどの参加国からも怒りの声が聞かれなかったこと、等から判断すればそのような事態となる可能性は決して低くはないと考えざるを得ない。
また、唯一直接的なシリアスな脅威を感じる立場にある日本の唯一の同盟国であるアメリカが、北朝鮮のテロ支援国家指定の解除の議論を堂々と行いつつあるという事態もそのような懸念を強くする材料である。そもそもラングーン事件以降長きに渡ってテロ支援国家に指定されてきた北朝鮮が、核実験を強行し、ミサイル実験を強行し、拉致問題という犯罪行為がより明らかになったこのタイミングで、テロ支援国家指定解除という恩恵を受ける合理的理由は皆無なはずである。
にもかかわらずそのように世界の動きが進んでいるということは、今回の六カ国協議も北朝鮮のゴネ得に終わる可能性が極めて高いことを示しているのではないか。日本以外のどこの国もが北朝鮮の核廃棄よりも地域の安定と核の不拡散を優先するスタンスにあると考えられる現状では、今回の初期段階措置にしても高濃縮ウラン計画を含むリストの提出やその検証が真剣に行われる可能性は低いだろうし、さらには現在保有しているとされる核弾頭の廃棄にしてもどれだけ真剣にこの枠組みで対処できるかは疑問である。唯一真剣に北朝鮮が核を廃棄するまで手を緩めずに追及することがありうるとすれば、それは日本が危機感を持って主導して妥協はありえないということを国際社会において言行両面でリードしていくことに成功した場合のみであろう。
これからの日本外交の手腕に期待したい。
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