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2019-08-02 13:50
竹島沖警告射撃事件が示す中露のリアルな脅威
倉西 雅子
政治学者
先日、竹島周辺の海域において、韓国軍機がロシア軍機に対して360発もの警告射撃を浴びせるという前代未聞の事件が発生しました。この事件、報じられている情報を拾い集めますと、緊迫感が漂う今日の国際情勢の一端が垣間見えるように思えます。
第一に、日本国政府として最も問題視しているのは、その現場が、日本国領である竹島であったことです。竹島を自国領と主張する韓国は、同島周辺12カイリを自国の領海と見なしています。それ故に、ロシア軍機の上空飛行を領空侵犯として警告射撃を行ったのですが、日本国側からしますと、ロシア軍機によって日本の領空が侵犯された上に、韓国もまた日本領空において軍事行動をとったのですから、これは、到底許されるべきことではありません。日本国政府が厳重に抗議するのは当然なのですが、この事件における韓国側の即応は、既に竹島周辺海域において、日本国による竹島奪還を想定した‘防衛体制’が構築されている実態を示しています。言い換えますと、今般の事件は、間接的ながらも日本国をも牽制するための‘警告射撃’の意味合いを含ませている可能性があるのです。第二に注目すべき点は、同事件には、中国が絡んでいることです。報道に依りますと、今般の事件のきっかけは、中露による初めての軍事訓練にあるそうです。どのような軍事訓練なのかと申しますと、東シナ海を北上する中国の爆撃機と日本海を南下するロシアの爆撃機が合流するというものらしいのです。警告射撃を受けたのは、A50空中警戒管制機ですが、軍事訓練の主役は中露の爆撃機なのです。これは、一体、何を意味するのでしょうか。爆撃機とは、相手国に対する空爆を目的とする航空機ですので、防衛用の兵器ではありません。すなわち、爆撃機の展開事態が、極めて攻撃的な行動である点を考慮しますと、今般の事件は、中ロによる‘合同爆撃訓練’が発端となっているのです。そして、その意図については幾つかの憶測があり得ます。
第一の推測は、朝鮮半島の有事を想定した牽制というものです。米朝首脳会談の可能性を将来に残しつつも、北朝鮮の核・ミサイル問題は暗礁に乗り上げており、先行きは不透明です。業を煮やしたアメリカによる対北軍事制裁もあり得る状況にありますので、韓国政府は、同訓練を、北朝鮮有事を想定した米韓同盟に対する牽制と見ているそうです。あるいは、中露の爆撃機は、日本列島と朝鮮半島を分かつかの如く対馬海峡を横断して飛行しておりますので、朝鮮半島有事に際して日米同盟発動を阻止するためのデモンストレーションであった可能性もありましょう。このケースでは、日本国は、中露両国から空爆の脅しをかけられていることとなります。第二の推測は、イラン情勢の悪化から第三次世界大戦が引き起こされた場合の、中露間の共同軍事行動の予行練習というものです。この場合には、中露は、朝鮮半島全域を自陣営に取り込み、対馬海峡を挟んで日米陣営に対峙する構えを見せている可能性は極めて高いように思えます。穿った見方をすれば、北朝鮮主導による南北統一のシナリオが遅々として進まない中、背後で同シナリオを支援してきた中露による‘実力行使’の前兆であるのかもしれません。つまり、第三次世界大戦にあって、日本国は否が応でも陣営対立の最前線に置かれるかもしれません。
以上の二つは憶測に過ぎませんが、同事件は、近い将来、朝鮮半島発であれ、イラン発であれ、日本国が中露両国から軍事攻撃を受ける可能性を示しております。日本国政府は、竹島問題に留まらず、中露による共同爆撃訓練の真意を掴むべく、情報収集と分析を急ぐべきではないかと思うのです。
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