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2007-05-17 10:22
日本中東新時代――戦略的パートナーシップの芽生え
山内昌之
東京大学教授
安倍晋三首相は、四月二八日から五月二日にかけて中東を訪問した。サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、クウェート、カタール、エジプトの五カ国である。とくにサウジアラビア以外の湾岸の「小さな国」を三つも訪れた安倍首相の決断は評価に値する。
それに関連して、戦略的な決定として二つの点が目立った。第一は、サウジアラビア国営石油会社に沖縄県の国家備蓄基地を一部貸与する取り決めが結ばれた点である。サウジアラビアはアジアや北米向け原油の輸送距離を短縮する代わりに、日本も緊急時にこの備蓄石油を優先的に購入できる権利を確保したといえる。これはODAを使えないサウジアラビアとの戦略的協力であり、日本のエネルギー安全保障とサウジアラビアの原油利権を密接な関係にする成果といえるだろう。第二は、国際協力銀行(JBIC)がUAEのアブダビ石油公社と原油の安定供給を条件に年内に巨額融資に応じる業務協定を結んだことだ。これは、高い油価に満足して、これまで国外からの融資の申し出に消極的だった産油国にしては思い切った決断といってよい。アブダビは融資を油田の新規開発に投入するが、これは日本の自主開発原油枠の増加にもつながる。日本政府は、現在輸入量の一割にとどまる自主開発原油を二〇三〇年までに四割に引きあげる方針である。今回の二つの決定は、長期の視野をにらんだ戦略的決定にほかならない。日本と中東との関係も戦略的なパートナーシップをにらんだ新時代に入りそうである。
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