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2018-08-30 11:21
トランプ政権は中国の覇権主義を粉砕せよ
加藤 成一
元弁護士
米中貿易戦争が激化している。その本質は、単に米国の対中巨額貿易赤字(3756憶ドル=約41兆円)削減の問題以上に、知的財産権などハイテク分野での覇権を狙う中国に対する米国の深刻な危機感である。中国は、ハイテク産業の振興を図る政府戦略「中国製造2025」で、米国の技術覇権に挑戦する姿勢を見せているからである。トランプ政権は、中国による米国の知的財産権の侵害、米国企業からの技術移転の強要などを問題視し、第一弾として、本年6月に米国通商法301条に基づき、500憶ドル(約5兆5000億円)相当の情報通信機器、化学製品、ハイテク電子部品、鉄鋼製品などの中国製品に25%の制裁関税を課した。さらに、トランプ政権は、第二弾として、8月23日に160憶ドル(約1兆8000憶円)相当の中国製品に25%の追加関税を課した。のみならず、中国による不公正な取引慣行を理由に、第三弾として、9月以降に2000憶ドル(約22兆円)相当の中国製品に制裁関税を課すことを検討している。
中国もこうした米国による制裁関税に対抗するため、米国製品に対して25%の報復関税を課している。しかし、米中貿易戦争では、到底中国に勝ち目はない。なぜなら、中国の米国からの輸入額は1299憶ドル(約14兆円)であるが、米国に対する輸出額は5055憶ドル(約55兆円)であり、輸出が輸入の4倍にも達するからである。のみならず、中国の貿易依存度(GDPに対する貿易額の比率)は32.93%であり、日本の27.45%、米国の20.06%よりも高く、しかも、中国経済は対米輸出に大きく依存しているから、米国抜きでは中国の経済発展はない。したがって、米中貿易戦争が長期化すれば、中国にとってダメージは大きい。特に、米国によりハイテク製品に25%の高額関税が課されれば、中国のハイテク産業は相当な打撃を受け、ハイテク分野における中国の覇権の確立は著しく困難となろう。
中国は、知的財産権などハイテク分野での覇権を握ることによって、GDP(国内総生産) で米国を追い抜き、さらに、サイバー攻撃や宇宙空間も視野に入れた、先端ハイテク兵器の開発により軍事面でも米国を超え、早晩、西太平洋における制海権、制空権の掌握による覇権を狙っていると言えよう。このことは、第二次大戦後から現在まで、圧倒的な経済力と軍事力によって世界の覇権国であり続けた米国にとって、到底容認できる事態ではない。したがって、「中華民族の偉大な復興」や「一帯一路」を掲げる習近平政権が、米国に代わってアジア、太平洋地域のみならず、世界における覇権を掌握すべく米国に挑戦すれば、米中貿易戦争はますます激化するであろう。
世界第六位の領海及び排他的経済水域を保有する海洋国家の日本にとっては、何よりも「自由で開かれた平和な海」が国益であり、南シナ海における中国による傍若無人な軍事基地建設と同様に、西太平洋においても、中国が制海権、制空権を掌握し、西太平洋が中国の支配に帰する事態は最悪である。共産党一党独裁政権である中国に、米国に代わって、アジア、太平洋地域のみならず、世界の覇権を掌握させてはならない。日本は、「自由と民主主義」の価値観を共有する米国、韓国、インド、豪州、ニュージーランド、タイ、フィリピン、台湾などの諸国と連携し、「自由で開かれたインド太平洋戦略」を推進し、アジア、太平洋地域における中国の覇権を阻止することが日本の国益である。したがって、日本政府としては、トランプ政権が米国のハイテク分野などにおける中国による数々の不正行為を糾弾し、中国の覇権主義を粉砕すべく果敢に戦っていることは日本の国益に適合するから、これに理解と協力の意思を示すべきである。
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