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2018-08-07 10:46
米国の対イラン政策、そして、米欧関係について
真田 幸光
大学教員
私は、米国のトランプ政権は、最大の緊密国であるイスラエルの意向を尊重し、「対イラン圧力強化」を最優先し、例えば、北朝鮮との間も、一旦、「和睦」に導き、「イラン包囲網」を強化する方向にあると見ています。そして、米国政府は、例えば、イラン制裁が緩んだ際にイランとのビジネス関係を拡大しようとしていたドイツ企業に対して、「イランとの取引を拡大するのであれば、米国として圧力を加える。」ことを示唆し、イラン包囲網の強化に向けた動きを既に取り始めています。トランプ政権はそれほど、「イラン包囲網の強化」に力を入れていると見ておくべきでありましょう。
さて、そのトランプ政権にとって、イラン包囲網を成功に導く道の一つとして、北大西洋条約機構(NATO)の有効利用があると考えます。これまで、加盟国にとって、NATO首脳会議というものは儀礼的なものとなっており、加盟国が一堂に会し、同盟の強固なることを宣言し、「安全保障について、今後とも、相互に団結して行くこと。」を誓い合うものであったはずです。しかし、米国がトランプ時代になり、NATOは、(1)不安を煽るが如き相互対決(confrontations)の場、(2)なんとかして長期にわたるダメージが起きることなき様にと努力する場となって来ている、とニューヨークタイムズなどはコメントしています。特に、今のNATO首脳会議は、ヨーロッパの加盟国たちにとっては、「ロシアの脅威が一段と高まっていることに対する対応策を探る重要な首脳会議である。」との認識を持っていると思われますが、トランプ大統領は、特にドイツに対して、「ドイツの防衛支出は、約束のGDP対比2%に達していない。米国は、ヨーロッパに食いモノにされている。こんな状況は、不公正であり、米国は受け入れがたい。ドイツをはじめ、ヨーロッパ諸国は、もっと防衛費を増やすべきである。いつまでも米国に頼るのはやめてほしい。」と批判しており、議論の焦点がかみ合っていません。
ある意味では、今やトランプ大統領は、NATO加盟国間に不協和音を巻き起こしている、とも言え、こうした見方をする者は、「トランプ大統領の言動により、プーチンの思う壺になる。」との見方までしています。そして、上述したように、トランプ大統領は、とりわけドイツに対し、特別な敵意を抱いているとも見られ、「ドイツは、活気溢れる社会システムを発展させ、輸出によって経済は、不当に繁栄させ、その一方で、米国の力を借りるばかりで、防衛費は少ない。いいとこ取りをする国家運営は中国本土にも似ている。」と強烈に批判、これにより、ドイツからは、「2024年迄に防衛支出をGDPの1.5%迄高める。」との約束を取り付けています。そして、トランプ大統領は、「米国産品をもっと買え。」といった圧力も加えており、こうした揺さぶりを掛けつつ、NATO諸国の一部にある、「イラン包囲網の強化」に対する反対の声を押さえ込もうともしていると見られます。そして、前述したように、NATO諸国の一般的関心事である、「ロシアの脅威に対する対応姿勢」に関しては、トランプ大統領は、去る6月には、「ロシアをG8に復帰させよう。」と言い出し、「対イラン制裁については協力やぶさかではない。」と言うプーチン大統領との意思を意識しつつ、「ロシアと米国はうまくやって行くべきである。」とのスタンスも示唆しているのであります。
こうしたトランプ大統領のプーチン大統領に対するスタンスを見て、米国の保守系の多くの論者は不安に感じているようでありますが、トランプ大統領閣下は全く意に介していないようでもあります。そして、NATO諸国の間には、「米国をどこまで信頼して良いか分からない。」と言った声まで出ているようですが、これにもトランプ大統領閣下は全く気にしていないようであります。米国と欧州関係はどうなるのか、今後も注意を払わなければならないと思います。
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