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2018-05-30 10:28
北朝鮮の戦略について
真田 幸光
大学教員
「北朝鮮と言う国はしたたかな国である。」と言うのが、私の率直な印象です。北朝鮮軍の大佐と韓国・朝鮮語で会話した経験からすると、彼には軍事以外のたくさんの情報が入っており、「所謂、地政学を学び、世界を俯瞰する力がある。」と感じましたが、その延長線上でコメントを申し上げれば、「北朝鮮のしたたかさの背景には緻密な情報収集とその分析に裏付けされたものがある。」と思います。従って先ずは、「北朝鮮を侮ってはいけない。」と考えており、更に、米国やロシア、中国本土などと比較すれば明らかに国力の弱い国であるので、「自国を守る為には手段を選ばぬ大胆な動きを取る国」であるとも考えています。
そして、こうしたことを前提として、北朝鮮の「核兵器」に対する基本姿勢を、私の視点から申し上げますと次の通りとなります。北朝鮮を建国した金日成氏は第二次大戦中は抗日パルチザンとして、旧ソ連軍と連携していた人物であり、また、マルクスレーニン主義をきちんと学んだ人物として、旧ソ連とは緊密であり、戦後の北朝鮮という国家運営は旧ソ連と平仄を合わせて行い、また、その基本姿勢は正日氏、正恩氏にも基本的には引き継がれている。そしてまた、第二次大戦の終戦が米国の核爆弾投下によって齎されたものと実感、核兵器の意味を最もよく知る人物の一人であった事も我々は忘れるべきではなく、北朝鮮が核兵器に対してナーバスなのは、こうしたことも背景にある。北朝鮮の核技術は旧ソ連、そして最近は旧ソ連の流れを引く専門家から齎されているものと予想され、また、最近のミサイル開発技術の向上は、旧ソ連のロケット開発で実績のあるウクライナ系の技術者が支援して、その技術が担保されているものとみられている。
北朝鮮の核兵器に対する基本姿勢は極めてシンプルである。即ち、「北朝鮮は基本的には非核化を賛成している。」のである。しかし、北朝鮮だけ、或いは朝鮮半島だけの非核化は基本的には想定していない。何故ならば、国連安全保障理事会の拒否権を持つ恒久的常任理事国と、いつの間にか核兵器を持ち、それを既成事実化している国が核兵器を持ち続けるのは不公平、不公正と考えており、「北朝鮮も非核化するが世界全ても非核化すべし。」と言うのが基本姿勢である。但し、戦術上、一旦、北朝鮮が世界に優先して非核化に向けて動き出す可能性がある事は、完全否定してはならぬと思われる。こうして、北朝鮮は、既に核兵器を持つ核保有国と対等になる為には、先ずは北朝鮮も核開発、ミサイル開発をして、既成事実化し、事実上の核保有国となる道を走り続けた。そして、今般、小さいながらも、核保有国の状態にまで、準備が整ってきたことから、強硬姿勢から一転、対話による非核化に向けたステップに入り込んできた。しかし、リビアのカダフィ大佐の顛末、そしてイランに対する欧米主要国の対応を見ていると北朝鮮には、欧米主要国に対する不信感が根強く存在しているものと予想され、上述したように、戦術上、一旦、非核化を受け入れる姿勢は見せても実態として、完全、検証可能で、不可逆的な非核化にまで踏み込んでくる可能性は、少なくとも現段階では少ないと見ておくべきであろう。また、北朝鮮は文字通り、「核カード」を保有し、これにより、経済外交交渉などを有利に展開しようとする姿勢も窺われ、注視する必要があろう。
一方、国際社会が強く意識する核ミサイルの陰にあって、北朝鮮は核兵器の小型化をした上での大量生産化に入ってくる可能性も否めず、こちらも同様に国際的検証の対象に加えるべきである。更に、北朝鮮の兵器製造に関して言えば、北朝鮮は先のマレーシアで見られた事件を取っても分かるように、化学兵器、細菌兵器の開発にも注力しているのではないかと言われていることから、核兵器を捨て、その裏側で、化学兵器、細菌兵器開発に注力していく危険性もあることから、これに関する検証可能で不可逆的な約束を、国際社会はここで、一気に取り付けに行くべきである。基本的に朝鮮民族は状況変化に臨機応変に対応し、その立ち位置を切り替えていくことに長けている民族なることから、国際社会は、特に、「不可逆的な」というポイントについて、慎重に北朝鮮側と詳細を詰めていく必要がある。尚、こうした一連の動きに関して、「北朝鮮は水面下でロシアと平仄を合わせている可能性が高く、ロシアの了解と支援を受けていると考えておくべきであろう。」という点を特に挙げておきたいと思います。
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