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2018-03-23 10:21
「安倍内閣総辞職」は国益に反する
加藤 成一
元弁護士
学校法人「森友学園」への国有地売却に絡む財務省の「決裁文書書き替え問題」で内閣支持率が急落し、安倍内閣が苦境に陥っている。立憲民主党や共産党などの野党は麻生太郎副総理兼財務大臣の辞任と内閣総辞職を求め、佐川宣寿前理財局長や安倍昭恵首相夫人の証人喚問などを要求している。「決裁文書書き換え」は、刑法の公文書偽造罪等に該当する可能性があるのみならず、行政の信頼性を損なう行為である。決裁文書は行政処分の適法性や妥当性を担保する機能を有するものだからである。徹底的な原因究明と再発防止策の確立が必要不可欠であろう。
しかし、「決裁文書書き換え」の内容や経過を見ると、削除ないし書き換えられた個所は、国有地売却交渉の経過に関する「事情」がほとんどであり、「森友問題」の核心である本件売却価格決定の適法性や妥当性に直接かかわるものではない。安倍昭恵首相夫人が籠池康典氏に述べたとされる「いい土地ですから、前に進めてください」との箇所や「感涙した」との箇所も、仮にそれが事実であったとしても、本件売却価格の不当な引き下げを求めたものとは言えず、本件売却価格の決定を直接左右するものではない。単なる昭恵夫人の「希望」ないし「願望」を述べたに過ぎないとも言えるからである。もともと鑑定価格から8憶円余を減額した本件売却価格の核心は、売却後に新たなゴミが地中から発見されても、売主である国側は一切の損害賠償責任を負わない旨の瑕疵担保責任を免除する特約付き売買契約(民法第572条)だということである。将来における更なるゴミ発見の可能性を完全には排除できないとすれば、必ずしも減額が不適法且つ不当であったとは言えないであろう。なぜなら、減額は「森友学園」側との本件土地に関する将来における一切の紛争をあらかじめ防止するものだからである。
安倍内閣はこの5年間で内外の諸課題に着実に取り組み実績を上げてきた。内政では、「アベノミクス」によりデフレからの脱却と経済成長を成し遂げ、企業業績の向上、賃金上昇、有効求人倍率も上昇してほぼ完全雇用を達成し、大きな成果を上げてきた。外交安全保障では、北朝鮮による核・ミサイルの脅威や中国による尖閣諸島奪取への脅威にも、集団的自衛権の限定的行使を含む日米連携やミサイル防衛の強化など適切に対処してきた。今後予想される「南北首脳会談」や「米朝首脳会談」など最近の激変する北朝鮮情勢を考えると、米国トランプ大統領と緊密な関係を築き上げた安倍首相の役割はますます重要であるから、日本の国益のために引き続き政権を担当すべきである。
野党が、「書き換え問題」とは全く関係のない安倍昭恵首相夫人の証人喚問を執拗に要求するのは、その証言自体が目的ではなく、妻である昭恵夫人を証人として国会でいわば「さらし者」にすることによって、夫である安倍首相自身に自発的退陣を余儀なくさせるのが真の目的であろう。なぜなら、国政選挙で5連勝し選挙に強く実績のある安倍首相が今後も引き続き政権を担当すれば、野党の政権奪取は長期にわたって益々困難になるからである。したがって、自民党は野党による「安倍昭恵夫人証人喚問」要求の戦術にはまってはならない。国政は決して「森友問題」と「書き換え問題」だけではない。急展開する北朝鮮情勢を考えれば、「安倍内閣総辞職」が著しく国益に反することは明らかである。
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