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2017-11-30 18:15
IMFの見る韓国経済について
真田 幸光
大学教員
韓国の財界人は、多分、「IMF」という言葉には、あまり良い響きを感じていないものと思います。1997年に発生したアジア通貨危機のことを韓国では、「IMF危機」と言う人もおり、通貨危機の後、IMFの指導を受け入れざるを得なくなった当時の韓国を思い出すことを嫌がる人もいます。また、だからこそ、「IMFの韓国経済に対する評価」には極めて神経質であると言えるかもしれません。
さて、こうした中、国際機関である、その国際通貨基金(IMF)は、ソウルの政府庁舎で会見を開き、今月1日から韓国政府などと進めた協議結果を発表しています。IMFは今年の韓国の国内総生産(GDP)成長率見通しを3.2%とし、0.2ポイント上方修正し、韓国政府としても安堵しているものと思います。先月10月に発表した見通しでは、今年と来年の成長率見通しをそれぞれ3.0%としていたものが上方修正されたものであり、安心感も増していることでありましょう。そして、IMFの韓国経済に関するコメントでは、「韓国の短期的な見通しは地政学的な緊張が高まったにも拘わらず改善されている。経済成長は2016年下半期の鈍化以降、今年に入ってからは回復傾向を見せている」との見方を示しています。
また、経常収支の黒字規模は今年のGDPの5.6%となると予想し、韓国経済の弱点とされている、「家計債務(個人負債)」に関しては金融安定のリスク要因だが、現時点では政策が効果を出していると評価しています。その一方、韓国経済は構造的な問題により、堅調で持続可能な長期成長に戻れなくなっているとの指摘も出ています。そして、IMFは、「韓国の潜在成長率は1990年代初期の7%から3%以下に下落した」とし、その理由として人口構造の変化や生産性の伸び悩み、所得の二極化、機会の不平等などを挙げているのであります。更に、経済協力開発機構(OECD)加盟国の中で著しく高い高齢者の貧困率、若者の失業問題、不充分なセーフティーネット、大企業と中小企業の二重構造などがこのような不平等を引き起こす主な原因であるとも指摘しています。
そして、これらの問題を改善するためには、拡張的な財政と緩和的通貨政策の基調を維持しなければなければならないとコメント、また成長の勢いがある現時点から正規雇用の柔軟性拡大をはじめとする労働市場の構造改革を推進しなければならないとも指摘しています。今後の動向をフォローしたいと思います。
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