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2017-08-08 09:53
正直なAIが中国に革命をもたらす
倉西 雅子
政治学者
中国では、インターネットサービス大手・テンセント(騰訊)がAIとの対話プログラムのサービスを提供していたそうです。このサービス、思いもかけぬ事態から停止に追い込まれたというのです。
対話プログラムが中止された原因は、AIの正直さ、否、分析の正確さにあります。同社のAI、“QQ”は、“中国共産党は腐敗していて無能”とチャットしたのですから。AIと言えば、ディープラーニングの進歩により、集積されたデータから自己判断が可能なほどまでの発展を見せおり、“QQ”は、いわば、テンセントのAI技術の高さをネット上で広く宣伝するための役割を担っていたはずです。そして、同社が誇る先端技術の粋を集め、かつ、人間の脳のメモリーを遥かに越える大量のデータに基づいての判断だけに、“QQ”の発言は、ある意味において、人間の判断以上に客観的で科学的、かつ、正確である可能性が高いのです。
もっとも、“QQ”のチャットは入力されたデータの質や量に依存していますので、必ずしも客観的とは言えないとする反論もありましょう。しかしながら、テンセントは、香港証券市場において上場されているとはいえ、その本社は中国の広東省深圳市に置かれており、中国当局による厳しい情報統制の下にあります。同社が共産党にとりまして不都合なデータを集中的、かつ、選択的に“QQ”に投入したとは考えられません。また、中国におけるAI技術の急速な進歩は、13億の国民を基盤とする大量のビッグテータの処理能力に依るところが大きく、“QQ”の判断が、同社が収集した中国国民のデータに基づく“世論”の解析結果であるとしますと、“共産党は腐敗して無能”は、“QQの声”ならぬ“人民の声”ともなりましょう。あるいは、“腐敗”や“無能”という概念を学んだ“QQ”は、これらの構成要素と中国共産党の行動を照らし合わせて、同一性を認識したのかもしれません。
何れにしましても、“QQ”のチャットはそれが的を射ているだけに、中国国民は“我が意を得たり”の心境となったのではないでしょうか。そしてそれが、国民の中国共産党に対する“腐敗と無能”の評価を疑いから確信へと転じさせたとしますと、近い将来、民主・自由化への“‘革命の指導者’がAIであった”という人類史上初めての事例が出現するかもしれません。
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