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2017-06-05 14:21
ASEANについて
真田 幸光
大学教員
東南アジア10か国から成るASEAN(東南アジア諸国連合)は、1967年の「バンコク宣言」によって設立されました。よって、今年で50年、半世紀を経た訳であります。原加盟国はタイ、インドネシア、シンガポール、フィリピン、マレーシアの5か国であり、1984年にブルネイが加盟しました。私の認識では、ASEANは、そもそもは「中国本土の軍事面も含めた南下に対抗する組織」も目指して設立された国際組織でありました。その後、ラオス、カンボジア、ベトナム、ミャンマーが加盟国として順次参加し、現在は10か国で構成され、2015年に共同体となったASEANは、過去10年間に高い経済成長を見せており、成長率の高い人口は既に6億人を超え、域内GDPも、また既に2兆5,000億米ドルを超えており、今後、世界の「開かれた成長センター」となる潜在力が高いと、世界から注目されています。
しかし、トウ小平氏の改革開放路線が進展、特に2000年代に入り、経済力を含めた中国本土の発展とその影響力拡大が顕在化すると、ASEANは、経済的メリットを含め、その中国本土を無視出来なくなっています。但し、その温度差はあり、ラオス、カンボジアのように中国本土に事実上既に取り込まれていると見られる国もあれば、シンガポールやマレーシアのように環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の協議にも参加しつつ、様子見をしながらも、中国本土との関係でのメリットを上げようとしている国もあります。
こうした一方で、「一帯一路」構想を前面に打ち出し、ASEANも含めて、より広い諸国に対して、slow & steadyでその影響力を拡大しようとしている中国本土は、したたかであります。こうした中、(1)その出自、受けてきた教育の中に中華民族の血と共産主義的思想も意識するドゥテルテ大統領が登場したフィリピン、(2)スハルト政権の32年間で根を張った国軍の影響力を弱めつつ、アジア諸国の中では最も早く、1920年に合法的に共産党を設立したインドネシアに、共産党を復活させようと水面下で動いていると見られるジョコ大統領が登場したインドネシア、(3)ワチラロンコン新国王を戴きながら、民主化復帰を目指す中、今や中国本土に近いと見られるタクシン元首相を軸とするタクシン派の影響力が強まるタイ、などはしたたかに中国本土との関係強化のチャンスを狙っています。
一方で、また、(4)中国本土と同じく社会主義・共産主義を標榜し、また北部には「小中華」的意識も実際にはあるベトナムでも、領土問題をはじめ、様々な課題を意識し、また、TPPにも参加しつつ、中国本土との交流メリットをしたたかに探すベトナムの動きも無視出来ないと思います。そして、総じて、「一帯一路戦略を進める中国本土との関係強化と言う基本姿勢を示すASEAN」を意識して、日本はどう動くのかを考えていくべきかと思います。即ち、国家としては、中国本土との外交関係も含めた視点から、日本企業としては、対中国本土ビジネス戦略と中国本土が進める一帯一路構想を意識しつつ、対ASEAN戦略を構築し直す時期に来ていると私は見ています。時代は大きく変わりつつあると思います。
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