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2016-11-02 11:04
不透明な金融市場と米国経済について
真田 幸光
大学教員
米国経済は単に一国経済ではなく、世界経済に大きな影響を与え、就中、我が日本経済には多大なる影響を与えることは、現状の世界経済の秩序の中では言うまでもありません。従って、私たちはその米国経済の動向には、一挙手一投足に亘って、注意深く眺め分析していく必要があると思います。
こうした中、米国の中央銀行にあたる連邦準備制度理事会(FRB)は、先般、地区連銀景況報告(ベージュブック)を発表しました。本年8月下旬から10月初めにかけての米国経済の状況について、このベージュブックは、「大半の地区で、わずか、あるいは緩やかに拡大を続けた」との見方を示しています。FRBはこうした景気動向分析を基にして、11月1~2日に金融政策を決める連邦公開市場委員会(FOMC)を開いておりますが、米国にとっては本年最大のビッグイベントである、11月8日に投開票が予定されている米大統領選があり、その直前でもあることから、政局への影響が出るかもしれないので、これを慮って、FRBは、追加利上げを見送るであろうとの見方が金融市場では大勢となっています。私も基本的にはこうした見方に賛成であります。
一方、このベージュブックと題する報告書では、米国の労働市場について、雇用の増加や賃金の上昇が見られているとした上で、「人手が不足気味の引き締まった状態が、労働市場には見られている」ともコメントしています。これに関しては、FRBは、現行の政策目標の中に、「雇用の最大化」を掲げていることから、政策目標の達成に向かってきちんと景気動向が追いついてきていることを内外に示していると見られ、政策効果が出ていることを強調するような内容となっています。即ち、こうした労働市場の堅調さは、FRBが意識している利上げを推進する上では好材料となります。そして、「サプライズ」を志向しやすい金融当局者、更に、利上げによる金融市場の健全化に向けた姿勢を貫いている鉄の指導者・イエレンFRB議長にとっては、こうした実態は、追い風となり、「近い将来の利上げ」ももしかするとあり得るのではないかとのイメージも持たせます。
そして、その際には、日米金融当局が、「政策連携」をして、米国の利上げに合わせた日本のマイナス金利幅のさらなる拡大を近い時期に協調して実施してくる可能性もありましょう。サプライズがお好きなような日銀・黒田総裁であれば、こうした動きもあり得るのではないかとの見方であります。また、その際には、先進国の株式市場さえ少し安定していれば、金利差を意識した円安・米ドル高の進展に再び市場は転じる可能性もあると私は見ています。いずれにしても、今後も、不透明な金融市場の動きを詳細にきめ細かく眺めていく必要がありそうであります。
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