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2016-08-22 12:56
アメリカの衰退と新自由主義の負の相関関係
倉西 雅子
政治学者
“失われた20年”という言葉に象徴されるように、バブル崩壊後の日本経済については、悲観論が蔓延してきました。こうした中、日本経済の強化には抜本的な構造改革が急務とされ、新自由主義的政策の一層の推進が提唱されております。
しかしながら、果たして新自由主義的な政策は、豊かな国家を約束するのでしょうか。共和党のトランプ候補は、“偉大なるアメリカを取り戻す”と訴え、米国有権者に対して保護主義的な政策を訴えております。その背景には、製造拠点の海外移転、安価な製品の輸入増、移民労働力の大量移入、人材の流出、過激な資本移動(外国人による不動産の買い漁りや外国企業による企業買収を含めて…)、バブルとその崩壊、富裕層の租税回避…が同時に起きてしまう新自由主義政策の結果として、短期間のうちにアメリカ国内の中間層が消滅へと向かわせている、すなわち、一般のアメリカ人は貧しくなってしまったとする認識があります。
今日、誰もが認めるように、一部の多国籍企業のCEOや金融投資家は豊かになっても、国民生活全般を見ますと、新自由主義の恩恵には偏りがあります。また、国際社会においても、経済が政治に優先されたため、軍事的に台頭する中国の拡張主義には目を瞑りがちとなり、少なくともアジアにおいては、アメリカのプレゼンスの低下が懸念されています。新自由主義が功を奏して、目下、アメリカの一般国民が豊かな生活と繁栄を謳歌し、安全をも享受しているのならば説得力があるものの、アメリカの衰退と新自由主義との間に負の相関関係が見られるとしますと、日本国に対する処方箋としてアメリカの政策に倣うように進言されても、首を傾げたくもなります。
経済、しかも、その恩恵において一部に偏った経済を最優先とする新自由主義は、結局は、政治・社会的な諸価値や安全・安定を蔑にするため、内外両面において深刻な問題を国民にもたらしているように思えてなりません。自由の最大化はリスクの最大化でもありますので、新自由主義に対する絶対的な傾倒には、共産主義への信奉と同じくらい危険な罠が潜んでいるのではないでしょうか。
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