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2007-02-18 11:02
北朝鮮は「時間を稼げない」と思い知るべし
佐島 直子
専修大学経済学部教授
北朝鮮核問題をめぐる六カ国協議は2月13日、核放棄に向けた初期段階措置と見返りを明記した共同文書を採択、閉幕した。共同文書は、60日以内に北朝鮮が寧辺の核施設の活動を停止、封印し、国際原子力機関(IAEA)の査察を受け入れる見返りとして、重油5万トン相当のエネルギー支援を開始する旨、および国交正常化に向けた日朝協議やテロ支援国家指定解除のための米朝協議を開始する旨も定めた。2003年8月に始まった六カ国協議としては、北朝鮮の核放棄をうたった2005年9月の共同声明採択から約1年半ぶりの大きな進展である。議長の武大偉中国外務次官は「六カ国協議は朝鮮半島非核化に向け重要かつ堅実な一歩を踏み出した」と成果を強調した。
しかし、この合意には、北朝鮮を一方的に利するものという識者からの批判が続出している。「北朝鮮の大勝利である」(重村早大教授)、「とても悪い合意だ。1994年の米朝枠組み合意の繰り返しに過ぎない」(ボルトン前米国国連大使)、「北朝鮮側は核施設の活動停止ではなく『臨時の中止』と言っており、いつでも再開できる」(平沢勝栄内閣府副大臣)。また、日本が「拉致問題の進展がない限り、共同文書に明記された北朝鮮へのエネルギー、経済支援に応じない方針である」ことに、日本の孤立を懸念する声もある(自民党部会など)。
ともあれ、六カ国協議の行われたこの3年半で、既に様々なことが明らかになっている。
第一に、韓国盧武鉉(ノムヒョン)政権の北朝鮮に対する宥和政策が核問題の解決になんら影響を与えなかったこと。
第二に、北朝鮮への経済制裁、とりわけ金融制裁は、金正日体制に対するボディ・ブローとして確実な効果をあげたこと。
第三に、北朝鮮の核実験に対する国連の一致した非難決議によって、「問題」は北東アジアのみならず、広く国際社会の知るところとなったこと。
第四に、北朝鮮に面子をつぶされ続けた中国が、眦(まなじり)を決して多国間外交に取り組んだこと。
第五に、米国ブッシュ政権は、過去の「米朝枠組み合意」の失敗の轍は決して踏みたくないのだが、イラク問題で窮地にあり、北朝鮮問題の解決に主導的な役割を果たせないこと。
第六に、もはやロシアも金正日政権に明らかに愛想尽かしをしていること。
第七に、珍しく日本がどの国にも媚びない独自の立場を貫いていること。今回の合意でも安全保障問題と人権問題を明確に切り分け、原理原則を明らかにしていること。
第八に、それでも関係各国は、現段階において、北朝鮮のこれ以上の暴走と崩壊に「対処」する意思も用意もないこと。エトセトラ、エトセトラ。
北京は「ミュンヘン」ではなく、誰も独裁者のレトリックに騙されてはいない。今回の合意で示されたタイムフレームは非常にリジッドで、北朝鮮にもはや残された戦略的選択肢は「無い」。合意内容が覆されるようなことになれば、北朝鮮に悲惨な末路が待っていることは明らかである。北朝鮮は「時間を稼げない」と思い知るべし。
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