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2015-12-07 15:38
戦争準備に入った中国:軍の大規模改革の意図
倉西 雅子
政治学者
日本国内では、集団的自衛権の行使について、左翼を中心に未だに反対の声は少なくありません。耳を澄ますと“軍靴の音”が聞こえると…。その一方で、中国からは、耳を澄まさなくても“軍靴の音”が周辺諸国を威嚇するかのように響いてきます。
人民解放軍の改革方針については、1月3日の対日戦勝記念式典等で既に公表されていましたが、11月26日、中国の習近平主席は、中央軍事委改革工作会議を主催し、2020年までの達成を目標に、“強軍戦略”として陸、海、空軍、並びに、ミサイル部門の指揮命令系統の統合を図ると共に、従来の“軍区”を“戦区”に改編する方針を公表したそうです。“統合作戦指揮体制”と呼ばれる指揮命令系統の統合目的は、おそらく、習主席に全軍の統帥権を集中させた軍事独裁体制を実現することなのでしょう。この体制転換は、毛沢東が唯一の独裁的指導者であった毛体制のみならず、ナチス・ドイツの体制やソ連邦のスターリン体制をも髣髴させます。“軍区”の名称の“戦区”への変更も、戦争こそが人民解放軍の主目的となったことを示しています。自国内に“戦区”を設けた背景には、中国が戦場になる可能性に加えて、自国内の反共産党勢力に対しても武力鎮圧で臨む方針が隠されているのかもしれません。そして、ミサイル部門の統合は、将来の戦争にける中国の主要攻撃兵器が、核兵器を搭載した大陸弾道弾ミサイルを含む各種ミサイル兵器であることを示唆しています。つまり、ミサイルの射程距離に入る範囲、即ち、アメリカを含む全世界が中国の攻撃対象となり得るのです。将来的には、宇宙部隊の新設も検討されていますので、国際社会における中国の脅威は増すばかりです。
マスメディアなどは、軍の大規模改革を南シナ海や東シナ海での日米との摩擦を念頭とした“軍事衝突に打ち勝つ戦闘・防衛体制の構築が狙い”と淡々とした調子で説明していますが、その実態は、世界規模の実戦を想定した攻撃的な侵略体制、あるいは、国際法違反行為をあくまでも貫き通すための暴力体制の構築に他なりません。
戦争とは、戦う相手あっての行為ですので、当然に、“仮想敵”と見なされている諸国は、中国の戦争準備への対応を急ぐ必要があります。中国軍部の思考は、古代から引き継いだ兵法の戦略に支配されていますので、近代以降に整えられた国際法、とりわけ戦争法(人道法)を順守するとは思えず、中国の攻撃目標とされた諸国は、最悪の事態を想定せざるを得ません。兵法に見られる謀略や奸計も当然に実践されるわけですから(既に実戦されている…)、相手の戦法に合わせた防衛体制を敷くべきではないかと思うのです。
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